抄録
[はじめに] これまでの結晶の核生成及び結晶成長の研究手法としては、さまざまな条件下で得られた結晶をX線回折や電子顕微鏡を用いて観察及び解析することによって、結晶成長のメカニズムに関する知見を得るという方法が取られてきた。しかし、溶液からの結晶成長の初期過程を考える場合、従来の方法を用いるのは現実的でなく、また反応系に攪乱を与えないようにすることは困難である。従って、結晶が核発生してから観察できるサイズへと成長するまでのプロセスをin situで測定するためには非接触でかつリアルタイムで測定を行わなければならない。 本研究では、結晶成長の初期過程を粒子サイズ分布や粒形に注目して明らかにすることを目的とし、サブナノメートルオーダーまでの分解能をもつ動的光散乱装置の立ち上げを行った。また、結晶成長の研究が広く行われている炭酸カルシウムを試料として用い、実際の結晶成長過程において粒子サイズ分布の変化を測定した。 [実験と結果] 光源は波長632.8 nmのHe-Neレーザーを用い、試料からの散乱光は光電子増倍管で計測して相関計を用いて散乱光の揺らぎの自己相関関数を得た。この装置では粒子の熱運動に基づく散乱光の揺らぎの相関関数減衰速度を測定することでその粒径を評価するだけでなく、散乱光の異方性を考慮することによってその粒子の形状を測定することができる。理論上ではサブナノメートルオーダーからの粒子サイズ分布をデータとして得ることが可能となる。 試料は塵埃が混入しないようにグローブボックス内で精製し、ストップトフロー法を用いて混合した後に測定を開始した。装置定数Φとレイリー比Rθはトルエンを用いて決定した。また、あらかじめ粒径の判っているポリスチレン標準試料(ポリマーサイズ80 nm, 200 nm, 500 nm)を用いて装置の校正を行った。 炭酸カルシウムを用いた実験結果については当日報告する。