抄録
はじめに 格子タイプに注目して構造形の議論をすると、ガーネットの空間群はIa3dであり、I格子に属するので、ガーネットの結晶形は{110}で囲まれた十二面体になると考えられる。珪酸塩ガーネットにおいては、組成やイオン半径、格子定数とモルフォロジーの間に一定の関係が見られ(Kostov,1968)、pyralspite系列は{211}面で囲まれた二十四面体であり、grandite系列では格子定数と8配位席と6配位席を占めるイオンの大きさの比に関係して{110}で囲まれた十二面体から{110}と{211}の両方を含む四十八面体に変化する。 本研究ではバナジン酸塩ガーネット;{NaX2}[M2](V3)O12, (X=Ca,Pb;M=Ni,Mg,Cu,Zn,Co,Mn,Cd)のモルフォロジーに着目した。実験 結晶の育成はフラックス法で行った。フラックスにはセルフフラックスであり温水に溶けるNaVO3を用いた。まず、NaVO3_---_ガーネット擬二成分系の相平衡図を作成した。次に擬二成分系の相平衡図を参考にして、(1)低過飽和低温実験(M=1から2%;Mはモル分率=100×ガーネットのモル数/(ガーネットのモル数+NaVO3のモル数)、750℃から580℃、徐冷速度0.5℃/hから1℃/h)、(2)低過飽和高温実験(M=1から2%、850℃から650℃、徐冷速度1℃/h)、(3)高過飽和高温実験(M=10%、1000℃から800℃、徐冷速度1℃/h)および(4)高過飽和低温実験(M=10%、800℃から600℃、徐冷速度1℃/h)の実験を行った。育成結晶をフラックスから分離して実体顕微鏡で結晶のモルフォロジーを観察した。結果と考察 (1)低過飽和低温実験は基本的には平衡形に近いモルフォロジーが得られる実験と考えられるが、{NaCa2}[M2](V3)O12, (M=Ni,Mg,Cu,Co,Mn,Cd)においては{110}で囲まれた十二面体結晶が得られた。一方、{NaCa2}[M2](V3)O12, (M=Zn)と{NaPb2}[M2](V3)O12, (M=Ni,Mg,Co,Mn,Cd)では{211}面で囲まれた二十四面体結晶が得られた。X=Ca、M=Znの場合、X=Ca、M=Ni,Mg,Cu,Co,Mn,Cdの場合と違って{211}面で囲まれた二十四面体結晶になるのは、Znイオンが4配位を好む性質がモルフォロジーにも影響を及ぼす現象と考えられ、興味深い。また、X=Pbの場合X=Caの場合と違って{211}面で囲まれた二十四面体結晶が得られるのは、Caはイオン性が大きいのに対してPbは共有性が大きいのが原因で、そのためにX=Caの場合は{110}がF面であるのに対してX=Pbの場合は{211}面がF面になっていると考えれ興味深い。 (2)低過飽和高温実験と(3)高過飽和高温実験のような高温実験ではいずれの組成でも{211}面で囲まれた二十四面体結晶になった。低過飽和低温実験で{110}で囲まれた十二面体結晶が得られた組成において、何故高温実験では{211}面で囲まれた二十四面体結晶が得られるかは、ラフネス転移温度と、ラフネス転移後のラフネスの度合いの温度依存性が{110}と{211}で異なるのが原因と考えられる。このことは8配位席のイオンの熱振動因子と8配位席が(110)面内と(211)面内に占める割合が異なることと関係していると考えられ、興味深い。