2021 年 68 巻 1 号 p. 76-79
クビアカツヤカミキリの幼虫は,モモ,ウメ,サクラ等の幹や枝の樹皮下を食害し,その木部に蛹室を形成するが,蛹室形成から羽化に至る動態の詳細については外部から直接観察ができないため不明な点が多い。そこで,栃木県宇都宮市の気象条件下で管理したモモ被害樹の丸太を定期的に解体し,木部に材入した幼虫による蛹室形成時期と,越冬後の蛹室内幼虫の蛹化および羽化時期についてそれぞれ調査した。その結果,6 月下旬から蛹室形成を完了させた幼虫が認められ,8 月には木部材入後の老熟幼虫のうち蛹室形成を完了させた幼虫の割合は 9 割以上に達していた。幼虫は蛹室内で越冬し,翌年の 5 月中旬に蛹化を始め,6 月上旬に羽化して成虫となり,しばらく材内にとどまったのち 6 月 20 日頃に丸太からの脱出が認められた。調査を実施した県央部の宇都宮市における成虫脱出は,県南部の佐野市と比べて 6 日遅く,同一県内でも地域間差がみられた。また,2019 年および 2020 年の 2 か年の調査の結果,蛹期間および羽化から脱出までの期間には年次間差が認められた。本種の寄生した被害樹か伐倒および処分の際に羽化した成虫の逸出を防ぐ必要があるが,地域間・年次間の差を考慮すると,伐倒および処分は 5 月までに完了する必要があると考えられた。