九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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当院における臨床実習での成長と目標達成度の関係
*田崎 秀一郎*吉村 修*楠元 正順*二宮 省悟*吉田 勇一
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p. 141

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抄録

【はじめに】

臨床実習教育は、学外での臨床実習(以下、実習)として、学内教育で学んだ事を臨床現場で実践していく部分として重要な役割を担う。平山は「理学療法教育の根幹は臨床実習であり、臨床能力のキーとなるのは臨床実習である」と述べている。我々は、2011 年から臨床実習指導体制の構築の検討を目的に、質問紙調査を行い、結果について論じてきた(吉村ら2018 ; 二宮ら2019)。一方、当院においては、各養成校が提示する目標に沿って、実習生自身で目標を立てるように指導体制をとり、本人の成長を促すようにしている。しかし実習生は、成長認識や目標達成に実習生間に差異を感じることも少なくなく、成長の認識と目標達成度の関係は,明らかにされていない。そこで本研究の目的は、実習生自身の成長認識と目標達成度の関係について把握することとした。

【方法】

調査期間は2017 年6 月から2020 年3 月。対象は当院にて実習を行なった理学療法学科の実習生のうち、8 週及び10 週間の実習生とした。調査は実習の成績のフィードバックを行った後、web アンケートを利用して実施した。また、調査に関しては実習指導に直接関わっていない者が行い、成績には一切影響しないことを説明し、できるだけ率直な回答を依頼した。回答方法は無記名で、選択回答とした。「成長したのはいつですか?」という問いに対して、実習の前半と回答した群を「序盤組」、後半と回答した群を「終盤組」とした。また成長した点を5 項目に分類し、その順位を回答させた。さらに「成長は、開始前を0%として、どのくらいですか?」、「学校の実習到達目標はどのくらい到達しましたか?」の質問についてそれぞれt 検定(序盤組-終盤組)及びFisher の正確検定(オッズ比=序盤組/ 終盤組)を用い、2 群の比較検証を行った。

【結果】

有効回答数は16 名。序盤組9 名、終盤組7 名であった。「実習で成長しましたか?」の設問では、「はい」16 名、「いいえ」0 名となった。「成長した点は?」では、序盤組は思考力7 名(77%)、技術1 名(11%)、行動力1 名(11%)に対して、終盤組は思考力3 名(42%)、精神1 名、技術2 名、知識1 名であった。思考力を1 位に選択したオッズ比の)95%信頼区間(CI)は0.09 〜 32.50 となった。「成長は、開始前を0%として、どのくらいですか?」では、序盤組76.6%、終盤組55.7%(p=0.027、95% CI:0.28 ~ 3.91) 有意差検定なしだった。「学校の実習到達目標はどのくらい到達しましたか?」は序盤組77.7%、終盤組67.1%(p=0.233、95% CI:-0.62 ~ 2.30) となった。

【考察】

自身の成長認識において、序盤組は思考力が上位に占めす一方、終盤組はばらつきのある特徴がみられた。日本理学療法士協会の教育ガイドラインでは、理学療法士に必要とされる10 項目の資質の一つに、思考力(起こっている現象の原因や現象同士の関係性を見抜く力)が示されている。当院においては養成校の提示する目標に沿って、目標達成に向けた日々の修正や方法論について,適切な指導が行えたことが推測された。しかし、成長度合いや各目標達成度は序盤組がどちらも7割以上に対して、終盤組はそれぞれ5 割、6 割程度であった。これは実習期間内にて成長認識を実感していても、気づきが遅ければ必ずしも各目標に対して十分に到達した状態ではないことが考えられた。本研究の課題として,調査対象が少数であるため、今後も継続して調査などを行う必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき、調査対象者に対して、口頭および文書にて研究主旨を十分説明し、同意を得て調査を行った。また、筆頭研究者所属施設の倫理委員会の承認を得た(承認番号:2007)。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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