九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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歩行時の前方推進の停滞を示した症例に対する末梢磁気刺激療法と課題指向型練習の併⽤効果
*新穂 輝*重岡 潤*野中 裕樹*藤井 廉*田中 慎一郎
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p. 44

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抄録

【はじめに】

近年,リハビリテーションにおける物理療法の活用として, 代表的な電気刺激療法として神経筋電気刺激療法(NMES)が挙げられる.NMES の介入方法については,課題指向型練習を組み合わせることで介入効果が増幅することが先行研究により報告されている.しかし,NMES のデメリットとして電気刺激に伴う痛みや不快感があり, 患者が痛みや不快感を理由に治療を拒否したと報告されている. 一方,近年では電気刺激療法にかわる新たな物理療法機器として末梢磁気刺激療法(PMS)が注⽬されている.PMS は,電気刺激療法と比較して,痛みを伴うことなく末梢神経や筋を刺激できることや,⾐服の上からでも刺激できるメリットを有する.先⾏研究における介⼊⽅ 法はPMS 単独での介⼊報告が多く,課題指向型練習との併⽤訓練の効果についての報告は極めて少ない.今回,歩⾏時の⽴脚終期(Terminal Stance:TSt)に著しく前⽅推進の停滞を認めた⾼齢⾻折症例に対し,前⽅推進の改善を⽬的とした課題指向型練習とPMS の併⽤訓練を実施し,歩⾏に対する効果・影響を検討した.

【症例紹介】

症例は第3 腰椎圧迫⾻折を呈した70 歳代⼥性であった.10 年来の右膝痛を患っており,他院にて右変形性膝関節症の診断を受けていた.歩⾏はFIM6 点(杖歩⾏⾃⽴ )であったが,右殿筋群の筋⼒低下,右股・膝関節の可動域制限などの⾝体機能の低下による右下肢の⽀持機能低下に伴い,TSt における前⽅推進に著しい停滞を認めた.

【理学療法介⼊】

右下肢 TSt における前⽅推進の改善を⽬的として,通常の理学療法に加え,右下肢の立脚初期(Initial Contact: IC)〜⽴ 脚中期(Mid Stance: MSt)を想定したステップ訓練と殿筋群に対するPMS の併⽤訓練を実施した.訓練の⽅法は,磁気刺激装置 Pathleader(IFG 社製)を⽤いて,殿筋群が活動するとされる IC 〜 MSt にかけて右殿部に刺激を加えた(刺激強度:90-100,刺激周波数:35-40).ステップ訓練において支持脚への荷重とともにフットスイッチを踏ませることで,荷重と刺激を連動させた.運動負荷量はBorg Scale13(ややきつい)レベルで統一した.1 回の介⼊時間は20 分間実施し,介⼊期間は1 週間とした.

【歩⾏解析】

計測は,三次元動作解析装置(KISSEICOMTEC 社製)を⽤いた.解析項⽬として,推進⼒の運動学的指標である Trailing Limb Angle(TLA: ⼤ 転⼦から第 5 中⾜⾻頭へのベクトルと垂直軸のなす⾓度)を算出した.介⼊前後における TLAの変化について,Wilcoxon signed-rank test を⽤いて⽐較検討した.

【結果】

介⼊前と比較して,介⼊後にTLA の有意な増加(p

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣⾔に基づき,対象には⼗分な説明を⼝頭で⾏い,同意を得た.

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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