九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
会議情報

アキレス腱断裂の受傷機転に対する調査
非スポーツ受傷の特徴
*竹ノ脇 直人*西牟田 亮*星野 航*田中 祐一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 77

詳細
抄録

【はじめに/ 目的】

アキレス腱断裂は若・中年者のスポーツ活動中の受傷( 以下、スポーツ受傷)が多い外傷である。しかし、スポーツ活動以外の受傷( 以下、非スポーツ受傷)はスポーツ受傷と比較して有意に受傷年齢が高いことが報告されており、当院のアキレス腱断裂患者においても高齢者の非スポーツ受傷を多く経験する。高齢者がアキレス腱断裂等の外傷を生じると移動能力の低下からADL・QOL 低下に繋がる。高齢者の代表的な外傷である骨折は、主な受傷機転が転倒であることが明らかになっており、その予防として、筋力訓練・バランス訓練・歩行訓練が効果的であると報告されている。このように受傷機転を明らかにすることは外傷の予防を図るうえで、重要となる。先行研究では、アキレス腱断裂の受傷機転をスポーツ受傷と非スポーツ受傷の大きな分類に分けて報告しているものはみられるが、非スポーツ受傷の受傷機転の内訳を細かく調査した報告は我々が渉猟し得た限り未見である。そこで本研究の目的は、当院におけるアキレス腱断裂患者を対象として、非スポーツ受傷におけるアキレス腱断裂の受傷機転を明らかにすることとした。

【対象/ 方法】

対象は2014 年度~2019 年度に当院でアキレス腱断裂の診断を受けた142 人とした。対象者の受傷機転をスポーツ受傷113 例と非スポーツ受傷29 例に分け、2 群間の受傷年齢の比較、および年代別受傷者数の割合を抽出した。2群間の受傷年齢はt 検定を用いて比較し有意水準を5% 未満とした。また、非スポーツ受傷においては細かな受傷機転と年齢層別の受傷機転の内訳をそれぞれ調査した。今回の非スポーツ受傷における受傷機転の定義として、動作中に転んで受傷した例を転倒、高所からの落下や飛び降りて受傷した例を転落、階段等を踏み損ない受傷した例を踏み外し、動作時に足部を捻り受傷した例を捻転、転倒を避けるためにこらえて受傷した例を踏み込みとした。年齢層の区分は34 歳以下を若年層、35~64 歳を中年層、65 歳以上を高齢層とした。なお、各調査項目はカルテより後方視的に調査を行った。

【結果】

当院のアキレス腱断裂患者は40 歳代での受傷が最も多かった。平均受傷年齢においては、スポーツ受傷が41.9 ± 10.7 歳、非スポーツ受傷が60.6 ± 17.4歳であり、非スポーツ受傷が有意に高く(p < 0.001)、70 歳代以降では全て非スポーツ受傷であった。非スポーツ受傷の受傷機転は、高齢層では転倒や捻転、踏み外しでの受傷が多く、中年層では転落、若年層では切創や事故による受傷のみであった。

【考察】

アキレス腱は30 歳代以降で腱内への血流量減少から腱変性が起こること、筋力は50~60 歳代以降で急速に低下することが加齢に伴う身体的変化として報告されている。したがって、40 歳代では腱変性にて脆弱化したアキレス腱に対して、筋力が比較的保たれている下腿三頭筋から高い張力を受けることになるため受傷者数が最も多くなっていると考える。高齢層では筋力や平衡機能などの運動機能低下により転倒等を起こしやすくなる。それに加え、アキレス腱の変性も加齢とともに進行するためより脆弱化する。これらのことから高齢層では転倒等の低エネルギーによる受傷が多かったと考える。また、高齢になるにつれスポーツ実施率が低下することも非スポーツ受傷の受傷割合が高齢層で多くなっている要因の1 つであると思われる。今回の研究から、高齢層の転倒リスクを減らすことが高齢層のアキレス腱断裂の予防に繋がることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言に則って行い、得られたデータは匿名化し、個人情報が特定されないよう留意した。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top