九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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手指PIP関節伸展拘縮に対し癒着剥離術と骨切除術を施行し、術後良好な成績を得た症例
*柴山 未奈美*幸田 愛*廣田 壮一郎*木村 淳*中川 広志
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p. 245

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抄録

【はじめに】

今回,伸筋腱癒着と過剰骨形成によりPIP関節伸展拘縮を呈し,伸筋腱剥離術及び骨切除術の症例を経験したので考察を加え報告する.

【症例】

40代前半,男性,ゴルフ場の植木の剪定中にバリカンにて受傷.左示指橈側動脈・指神経・zoneⅢ伸筋腱損傷と基節骨骨挫傷と診断され,同日手術となる.翌日退院し,外来通院へ.伸展固定26日から運動療法開始.受傷から8ヶ月経過後,左示指PIP関節伸展拘縮の為,手術となる.

【術前評価】

手指可動域は指用角度計を用いて測定した.左示指総自動運動(以下TAM)116°,MP関節0/80°(伸展/屈曲),PIP関節?-20/38°,DIP関節?-6/24°,腱機能度(以下%TAM)45%であり,左示指他動運動(以下TPM)158°,MP関節0/90°PIP関節?-4/42°DIP関節?0/30°であった.握力は右51kg,左36.2kg,HAND20は72/200点であった.X線所見として基節骨背側部に過剰骨形成を認めた.

【手術記録】

左示指橈側より5cm側方展開し,基節骨背側の過剰骨の部位で癒着した伸筋腱を剥離し,過剰骨を切除.PIP関節背側の瘢痕を切除し,他動的にTPD0mmとなったことを確認し手術終了とした.

【後療法】

術後は指伸筋腱の遠位滑走を出すため手指完全屈曲位にて固定.術後4日より運動療法開始.術後1週よりPIP関節屈曲用ストラップ1日5回装着.夜間固定なし.extention-lagを最小限に抑えるため,手指完全屈曲位固定の中で屈曲運動を患者に指導した.セラピスト介入は日中3回実施.

【結果】

術後3週経過時の成績は術前116°がTAM160°へ(MP関節0/82 °PIP関節-34/80°DIP関節0/32°),%TAM は45%から62%に改善した.術前TPMは158°がTPM204°へ(MP関節0/82°PIP関節 -10/88°DIP関節 0/44°).握力は術前36.2kgが28.8kg減少し, HAND20は70点から17点に改善した.

【考察】

Howshian SらはPIP関節伸展拘縮の要因として側副靭帯cord-like portion収縮,側索・中央索の癒着,骨間筋拘縮が原因であると述べている.症例は受傷後に側索・中央索の瘢痕組織が過剰骨と癒着したことで発生した拘縮であると考えられ,手術により剥離されたことで術中可動域も良好であった.伸筋腱剥離術後の場合,術後の夜間固定は伸展固定が推奨されているが今回, 背側関節包を伸張し,指伸筋腱の遠位滑走させた状態を維持することを目的として術後3日間,Bulky dressingにて屈曲位固定を行ったのち運動療法を開始した.セラピィでは側索の滑走を出すためのblocking-exや骨間筋短縮改善のためにMP関節伸展位でのIP関節屈曲を中心に行った.

結果,屈曲可動域としてPIP関節は38°から80°へ,DIP関節は24°から44°へと改善し,%TAMにて17%の改善を認めた.これは側索の滑走は得られたが,中央索は剥離と同時に過剰骨切除をした際の出血により再癒着が起きたことや,屈曲改善に伴うelongationによるものではないかと考える.

屈曲可動域の拡大により 術前ADLでは箒操作やコイン拾い,ペットボトルのフタを開けることに難渋していたが, これらの動作が可能となり満足度も高かった.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には,ヘルシンキ宣言に基づきあらかじめ内容・個人情報の保護を十分に説明し,同意を得て行った

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