日本LCA学会誌
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地域での技術・政策評価における統合評価モデルの活用:日本での脱炭素に向けたシナリオ検討を例に
芦名 秀一
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2021 年 17 巻 3 号 p. 150-159

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抄録

現在の社会経済システムを持続可能な姿に転換していくためには、社会、経済、技術等さまざまな要素について対策を検討し、社会を構成するさまざまなステークホルダーが協力しながらその対策を実施していくことが肝要である。統合評価モデルは、多様な要素の整合性を確保しながら将来の持続可能社会に向けた技術・政策等の対策を評価する手法のひとつであり、地域での気候変動対策分析(脱炭素化)へ応用した事例では、高効率機器の導入などの技術的対策に加えて、住み替えも含む土地利用・都市構造変化やバイオマス・産業排熱等も含む地域資源を活用した地域エネルギー事業導入なども重要であることを明らかにすることができているなど、地域の持続可能社会実現に向けた対策検討においても有用な知見を提供しうるものである。統合評価モデルを用いた地域での技術・政策評価には、社会、経済、エネルギー、資源ストック、地域資源などさまざまなデータが必要となるが、地域のエネルギー需給や CO2 排出量の現況把握に向けた研究の成果や、対象地域と類似した特徴を持つ地域の先行事例を参照するなどにより、データに関する制約を克服し、地域の持続可能社会に向けた計画づくりに活用することで、取り組み相互が整合的であり、かつ地域資源を最大限に活用した将来の道筋の検討と提案につながると期待される。

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