2020 年 39 巻 4 号 p. 66-76
わが国のアパレル業界においては,需要不確実性と在庫リスクを吸収すべく,期中生産・期中企画(シーズン中の追加的な発注・企画)が推進されている。果たして,こうした取り組みは不良在庫の削減に寄与しているのであろうか。この問いに実証的な回答を与えることが,本論の目的である。アパレル・メーカーから得られたサーベイ・データを分析した結果,①期中生産は不良在庫の削減に貢献すること,②期中企画は,小売段階を外部化した状況でそれを実施すると不良在庫が増大し,小売段階の一部あるいは全てを統合している場合でも在庫削減効果を持たないことが見出された。期中企画を実施する際には,小売段階をどの程度コントロール可能か,追加企画製品の生産・発注量の意思決定精度を高水準に保つ能力が備わっているか,という点に留意する必要がある。