2023 年 42 巻 3 号 p. 63-71
消費者に新たな体験を提供する技術としてバーチャルリアリティ(VR)が着目されている。本研究では,消費者を対象としたVRに関する近年のマーケティング研究の動向を把握することを目的とした。2019年以降に出版された実証的論文49篇を抽出し,これらを「コミュニケーション」,「空間設定」,「体験」,「デバイス受容」のテーマに分類した。「コミュニケーション」,「空間設定」,「体験」をテーマにした研究については,VRやVRデバイスが及ぼす影響を明らかにした。また,「デバイス受容」については,VRデバイスが消費者に受容されるための要因を明らかにした。最後では,各テーマに共通した最も重要な課題点として,各研究が対象とするVRデバイスやコンテンツの特性が不明確である点が指摘された。具体的な解決策として,各研究がVRの構成要素を測定し,報告することが指摘された。またこの他の課題として,VRの効果を説明する理論の整理,サンプルサイズの事前設計も指摘された。