2025 年 35 巻 3 号 p. 131-143
本研究は,国立国語研究所が構築を進めている『子ども版日本語日常会話コーパス(CEJC-Child)』を用い,子どもの日常会話における丁寧体使用を量的・質的に検討したものである.CEJC-Childモニター版に収録された調査対象児10名による,約50時間分の会話データから述語が動詞・形容詞である発話を抽出し,普通体・丁寧体の区別を行い丁寧体使用率を算出した.その結果,丁寧体は2歳から2歳半頃以降に安定して観察された一方で,丁寧体使用率が月齢に比例して上昇する傾向は見られず,むしろ収録場面の特徴に大きく左右されることが示唆された.そこで,丁寧体使用率の高い会話を中心に場面に着目して質的分析を行ったところ,複数の調査対象児に共通するものとして,丁寧体が,普段の自分とは異なる者として発話していることを表示する場面や,情報を確固たるものとして相手に提示する場面で使用されていることが確認された.