抄録
韓国で普及をみせている,清掃工場内で廃棄物から製造した蒸気を近隣の工場に供給する事業を報告し,その成立要因と日本での普及に向けた示唆を論じる。韓国では,2005 年より国家エコ・インダストリアル・パーク (EIP) 計画を通じて,EIP 事業の推進体制が整備されてきた。一般廃棄物の焼却炉と化学工場間での熱交換事業を具体例として,その実態を明らかにする。特に着目すべき点は,地域 EIP センターの役割であり,日本での普及に向けて参考になる点が多い。地域 EIP センターは,地道な Awareness Raising (意識啓発) 活動,利害関係者への説明,低コスト化を実現するビジネスモデルの知識・ノウハウの集約を継続し,次なる発展を見据えている。今後,国内で,廃棄物からの高度なエネルギー回収を低コストで推進するための示唆として,韓国の地域 EIP センターの機能を有する中間組織を創設し,戦略的に EIP 事業を進めることで継続的に知識集積を図る社会インフラを構築の必要性を提起している。