2019 年 62 巻 p. 3-9
本稿は古代中国やグーテンベルグでの聖書印刷に用いられたエアロゾル技術から,現代における商用展開の現状について解説する。近年,離散要素法および分子動力学を用いた気相中における粒子生成・成長のモデリング法の発展により,経験則に依らない気相プロセスの最適化が可能となっている。具体的には,気相中で生成する粒子の持つ漸近的な凝集構造と平衡粒度分布がプロセス設計を非常に容易している。これにより組成,サイズおよび形状が精密制御された機能性材料を火炎噴霧熱分解法により量産可能となる。すでに一部の高付加価値材料(例えば,銀ナノ粒子やカーボン被覆Coナノ粒子)が市販されている。一方で単原子貴金属担持触媒や呼吸分析用化学センサへの展開も期待されている。後者は,アセトン,NH3,イソプレン,さらにはホルムアルデヒドを選択的に検知することでそれぞれ体脂肪燃焼,末期腎疾患,コレステロールや室内空気汚染の指標として有効であり,複数のセンサを組み合わせることで災害時に瓦礫の下敷きとなった人々の発見さえも可能にする。