2024 年 67 巻 p. 61-69
再生医療や幹細胞研究で利用され始めたヒト幹細胞培養液は,様々な細胞成長因子や生理活性物質を含み,多様かつ多角的な作用機序によって細胞の機能活性化や構成成分の産生促進,並びに細胞の炎症抑制や損傷再生・修復に作用していることが解明されている。そのため近年では画期的な化粧品成分としても注目され,利用されだしている。
本稿ではヒト幹細胞培養液の化粧品利用上での肌深部への浸透性等の機能向上を目的として,本培養液を封入したPLGAナノ粒子を開発し,その効果を検証している。開発したナノDDS機能を有するPLGAナノ粒子は,幹細胞培養液成分を表皮や真皮まで浸透させ作用部位において徐放することで,持続的なコラーゲン産生促進効果をもたらした。このことは,しわ改善等に効果の高いエイジングケア化粧品への応用が期待される。