ミルクサイエンス
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原著論文
牛乳及びマイタケ(Grifola frondosa)の摂取は1,2-ジメチルヒドラジン処理マウス大腸において炎症関連サイトカインとアポトーシス関連タンパク質を調節する
カリヤワサム KMGRM山下 慎司福間 直希木下 幹朗
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2020 年 69 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

 日本をはじめとする東アジア諸国において大腸がんの罹患率は増加しており,その対策が急務となっている。先の我々の研究にて,牛乳及びマイタケの摂取はDMH処理マウスの大腸腺腫形成を抑制することを報告した(Kariyawasam et al., Milk Sci., 68(2), 85-93, 2019)。本報告では,その抑制機構を調査するために,先の報告で得られた大腸粘膜を用い,炎症関連サイトカインとアポトーシス関連タンパク質の発現を分析した。実験食はAIN-76に準拠し,牛乳(全脂粉乳)を10%加えた牛乳食,マイタケ凍結乾燥物を10%加えたマイタケ食,そして牛乳とマイタケを5%あるいは10%ずつ加えた混合食を設定した。そして11週間,マウスに各実験食を自由摂食させた。牛乳食,マイタケ食,混合食摂取はDMH処理による炎症性サイトカインTNF-αの増加を抑制した。とくに,牛乳食と10%混合食群はDMH未処理群と同程度のTNF-αレベルを示した。これらの摂取は他のサイトカイン発現も炎症抑制へと誘導した。一方,アポトーシス関連タンパク質発現において,これらの摂取群はコントロール群と比較し,抗アポトーシス性タンパク質を低値に,アポトーシス促進性タンパク質を高値に示した。加えて,DMH処理は盲腸内容物の短鎖脂肪酸レベルを低下させたが,マイタケおよび混合食摂取は短鎖脂肪酸レベルを増加させた。これらの結果は,牛乳及びマイタケの摂取による大腸腺腫形成抑制には大腸における炎症の抑制とアポトーシスの促進が関わっている可能性が示唆された。牛乳とマイタケ摂取による大腸保護へのアプローチは異なっており,そのため,単独摂取より同時摂取が大腸の健康により貢献するかもしれない。

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© 2020 日本酪農科学会
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