抄録
胸膜中皮腫は胸膜にがん細胞が認められる病態であり,胸壁や肺の表面にも腫瘍が浸潤・転移する.胸膜浸透による胸水貯留や,それに伴う呼吸困難を引き起こす要因となり,また縦隔胸膜より心膜に浸潤し腫瘍を形成すると拡張不全による心不全を引き起こすなど,早期の治療が必要となる.従来の単純X線画像による診断では,初期の中皮腫の発見は,中皮腫自体の初期症状の乏しさもあり困難であった.本研究では,胸部CT画像を用いて胸膜中皮腫の領域を抽出し,個別に体積を計測する手法を開発した.定量化を行うことで病状の進行度や治療の経過を数値的に判断することが可能となる.実患者のデータを用いて検証を行い,本手法での中皮腫領域の特定および定量計測による診断支援の可能性が示唆された.