抄録
担子菌を用いる芳香環,複素環構造を有する農薬の生分解を酵素学的視点から解明することを目的として研究を行った.モデル化合物として用いた2,4-Dの白色腐朽菌および褐色腐朽菌の菌糸体による分解では,Trametes versicolor, Pleurotus ostreatus, Lentinus tigrinus, Pycnoporus coccineusが2週間で農薬を完全に分解した.つぎに,様々な農薬の生分解を試みたところ,T. versicolorは除草剤,殺菌剤,殺虫剤に対して特に優れた分解を示し,また,食用きのことして広く栽培され,大量の廃菌床を利用できるP. ostreatusも実用的な性能を示した.そこで,T. versicolorとP. ostreatusを用いて,リグニン分解酵素であるマンガンペルオキシダーゼ(MnP)およびリグニンペルオキシダーゼ(LiP)活性と農薬分解活性の相関を調べた.その結果,T. versicolorとP. ostreatusのMnPはSiduronおよびo-Phenyl phenolを除く供試した農薬全てを分解した.また,T. versicolorのLiPは,Siduron以外の農薬を分解し,さらにMnPによる分解率が低かった農薬に対しても高い性能を示した.しかし,P. ostreatus ではLiP活性は検出出来なかった.農業サイトでのP. ostreatusの環境浄化についても併せて考察した.