抄録
菌床シイタケ栽培が盛んになる一方で害虫の問題も顕在化してきた.現在,栽培施設では電撃殺虫器や粘着シートなどにより駆除が行われているが,衛生面や廃棄の手間などから更なる駆除法が求められている.そこで本研究では昆虫病原性糸状菌による駆除に着目し,適した糸状菌を検索するために,栽培施設内に飛翔する害虫に付着する糸状菌を調査した.栽培施設内の粘着性捕虫シートに捕捉された双翅目昆虫から発菌していた菌の分離を行い,得られた菌株のrDNA-ITS 領域を用いた分子系統解析により種を推定した.その結果,供試した52 株中37 株がLecanicillium属菌と推定され,残りは1 株を除きCordycipitaceae やOphiocordycipitaceae に属する糸状菌などであった.また,これらの分離菌はシイタケの栽培方式の違いにより発生する種が部分的に異なる傾向を示した.