日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
24 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 石川 真梨子, 原田 慎嗣, 安積 良仁, 奥 竹史, 稲冨 聡
    2016 年 24 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒラタケ属5 菌株を用いて,新規性のある実用菌株開発の可能性を検討するために,交配育種をおこなったところ,新規菌株MH006404 を得ることができた.MH006404 は従来からの栽培種であるPleurotus ostreatusP. eryngii等と同様に人工栽培が可能であった.また,子実体の形態学的観察および遺伝学的解析の結果,P. ostreatus またはP. eryngii のいずれかに近似した特徴が散見された.
  • Surasit SUTTHIKHAMPA, 河井 祥, 林 未来, Sophon BOONLUE, 霜村 典宏, 山口 武視, 會見 忠則
    2016 年 24 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,Pholiota microspora での2 つのアルコール脱水素酵素(Adh),8 つのアルデヒド脱水素酵素(Aldh)と2 つのマンニトール-1- リン酸脱水素酵素(Mpd)遺伝子の発現を分析した結果,Aldh1, 2, 3, Adh1, 2,及びMpd1, 2の転写は,1 mMのエタノールの存在下の液体培養において全く影響を受けなかった.しかし,Mpd1 の発現はアセトアルデヒドで促進された.したがって,Mpd1 は,エタノール生産のためのアルコール脱水素酵素の候補である.一方,Aldh1 とAdh2 の転写は,3 mMのベラトリルアルコールの存在で促進された.したがって,Aldh1 とAdh2 の役割は,アルコール代謝から,芳香族化合物の分解に進化した可能性があると考えられた.Adh1,Mpd1,Mpd2 とAldh1 の転写は菌糸より原基および子実体で高かった.この現象はAdh1,Mpd1,Mpd2 とAldh1 の応答は子実体形成中に酸化ストレスが存在することを示唆していた.
  • 寺尾 さとみ, Roxana Yanira PARADA JACO, 田村 朋子, 上野 誠, 木原 淳一, 荒瀬 榮
    2016 年 24 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ハタケシメジ,シイタケ,マイタケおよびエリンギ子実体の熱水抽出液によるイネいもち病の抑制効果を調査した.各抽出液はいずれもイネいもち病菌の胞子発芽に影響を与えなかったが,各抽出液を7 日間前処理した全てのイネ葉において,イネいもち病の病斑形成数を対象区の蒸留水処理区と比較して著しく抑制する作用を示した.また,各抽出液を処理したイネ葉では過酸化水素の生成が観察され,さらに,PR タンパク質遺伝子のPR10a の発現が誘導された.これらの結果から,子実体熱水抽出液がイネに全身獲得抵抗性を誘導する可能性が示唆された.今後,抵抗性誘導剤として,子実体抽出液を用いたイネいもち病の防除への利用の可能性が考えられる.
  • 安積 良仁, 小木曽 加奈, 土居 香織, 下坂 誠, 大内 謙二, 稲冨 聡
    2016 年 24 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/22
    ジャーナル オープンアクセス
    きのこが料理全体の呈味性にどのような影響を及ぼすか,官能評価手法を用いて評価した.6 種類のきのこ煮汁を用いて作製したすまし汁を評点法で評価した結果,全てのきのこで呈味性が向上することが示された,その中でヒラタケ属新品種IC1 株について,食塩濃度と塩味およびおいしさの関係について詳しく試験した結果,IC1 には塩味緩和や味を濃くする効果が確認できた.また,タマネギや大根の煮汁との比較においても,有意に評点が高く,IC1 は料理全体の呈味性を向上させる優良な食材であることが示唆された.各種すまし汁に含まれる旨味成分量から等価うまみ濃度(EUC)を算出した結果,IC1 の呈味性向上作用は,旨味成分だけではなく,塩味を緩和するもしくは旨味を増強する他の成分が関与していることが推察された.
  • 佐々木 史, 高畠 幸司, 本江 謙市, 高畑 昇輝, 山内 隆弘
    2016 年 24 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/22
    ジャーナル オープンアクセス
    菌床シイタケ栽培が盛んになる一方で害虫の問題も顕在化してきた.現在,栽培施設では電撃殺虫器や粘着シートなどにより駆除が行われているが,衛生面や廃棄の手間などから更なる駆除法が求められている.そこで本研究では昆虫病原性糸状菌による駆除に着目し,適した糸状菌を検索するために,栽培施設内に飛翔する害虫に付着する糸状菌を調査した.栽培施設内の粘着性捕虫シートに捕捉された双翅目昆虫から発菌していた菌の分離を行い,得られた菌株のrDNA-ITS 領域を用いた分子系統解析により種を推定した.その結果,供試した52 株中37 株がLecanicillium属菌と推定され,残りは1 株を除きCordycipitaceaeOphiocordycipitaceae に属する糸状菌などであった.また,これらの分離菌はシイタケの栽培方式の違いにより発生する種が部分的に異なる傾向を示した.
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