日本きのこ学会誌
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異なる栽培きのこから分離されたEwingella americanaのシイタケおよびヒラタケに対する病原性
有馬 忍 篠原 弘亮キム オッキョン根岸 寛光
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2016 年 24 巻 3 号 p. 136-141

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抄録
黄褐変および腐敗した菌床栽培のヒラタケ,エリンギ,ヤマブシタケおよびエノキタケ子実体からA-D3 培地を用いて分離した細菌は,細菌学的性質および16S rRNA 遺伝子の塩基配列からシイタケ腐敗病菌Ewingella americanaGrimont et.al. (1984) と同定した.分離菌を菌掻き後のヒラタケ栽培ビンに噴霧接種した結果,子実体の菌傘が黄褐色に変色することを確認した.菌掻き4 日目の接種後に20℃で3 日間管理した栽培ビンからは,腐敗を伴う変色子実体が発生した.変色子実体から再分離を行った結果,Ew. americanaを接種した子実体はA-D3 培地上に黄色集落が生育したことから,コッホの原則を確認できた.今回の試験結果からEw. americana は,国内のきのこ栽培環境に広く分布し,子実体の変色や腐敗を引き起こすことが示唆された. 一方,Pseudomonas tolaasii を接種した栽培ビンからは,菌傘上に褐色の斑点が生じた子実体の発生を確認し,Ew. americana を接種した病徴とは異なった.本報告は,原基形成前のヒラタケ栽培ビンにEw. americana あるいはPs. tolaasii を接種する方法で,病徴を再現した初めての報告である.
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2016 日本きのこ学会
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