抄録
マツタケの子実体発生は森林内に限定され,環境的条件の影響を受けるため,生産量は不安定である.生産の安定化には,子実体発生に及ぼす環境的条件の影響を理解することが重要である.そこで,環境的条件がマツタケの子実体発生に及ぼす効果を明らかにするために,子実体形成時の地温を推定した.2001年から2004年の4年間に,寒冷地域に属する岩手県内陸部のアカマツ林の調査地で,近接する5個のコロニーを対象として,合計98本の子実体の成長と地下5 cmの温度を測定し,子実体の成長をロジスティック式で近似した.その結果,調査地におけるマツタケの子実体形成時の地温は約15℃と推定された.この推定値は温暖地域で得られた値よりも低く,かつ,調査地内でもジェネットにより異なったことから,マツタケが寒冷な気候に遺伝的に適応したことが示唆される.