抄録
エゾハリタケClimacodon septentrionalisはマクカワタケ科 Phanerochaetaceaeの食用きのこである.生物活性および新規化合物が報告され,将来薬用として期待されている.本きのこを安定供給することを目的に子実体の安定形成条件の推定を試みた.子実体発生操作の効果を調査した結果,浸水を伴った菌かきや打撲処理をしても収量性は低くかった.覆土処理では子実体の形成は観察されなかった.栽培袋に切り込みを入れる方法では,収量性が高く奇形子実体は殆ど観察されなかった. 25℃で50 - 60日培養した培地において,発生操作から収穫までの所用日数が最小の35日であった.15℃の発生温度では子実体まで分化しなかったが,17℃および19℃においては子実体を形成した.また, 19℃における収量性は17℃のそれよりも高かった.以上の結果にから,エゾハリタケ子実体を安定して形成させるためには,木粉培地を用いて25℃で50 - 60日培養した後,栽培袋に切り込みを入れ,19℃で維持する方法が有効であると思われた.