日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
日本におけるアラゲキクラゲ生産の現状と課題
奥田 康仁
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2022 年 29 巻 4 号 p. 134-140

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抄録

日本国内で食利用されるキクラゲ属は主にアラゲキクラゲやキクラゲが含まれ,消費量6位に位置する主要きのこである.公式統計調査では主に上記2種を含めて「キクラゲ類」として扱われており,種ごとの消費量や輸入量の内訳は不明だが,国内生産量はほぼアラゲキクラゲのみで占められている.これまでアラゲキクラゲの供給は輸入に強く依存してきた.近年,外国産のリスクが顕在化し,信頼性の高い国内産アラゲキクラゲの消費が拡大したため,国内生産量は急増している.国内産アラゲキクラゲの生産・消費の拡大に伴い,栽培品種の育成や栽培技術の検討,病虫害対策,分類学的再検討,食品表示の適正化といった様々な問題を喚起することとなった.また,シイタケにおいて既に問題となっている安価な輸入菌床の大量流入や原産地偽装表示などはアラゲキクラゲにおいても起こりうる状況にある.本総説では日本におけるアラゲキクラゲ生産の現状と動向を俯瞰することで,取り組むべき課題と将来的脅威を解説し,国内生産基盤の強化と持続的発展を図ることを狙いとする.

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