日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
29 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 奥田 康仁
    2022 年 29 巻 4 号 p. 134-140
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本国内で食利用されるキクラゲ属は主にアラゲキクラゲやキクラゲが含まれ,消費量6位に位置する主要きのこである.公式統計調査では主に上記2種を含めて「キクラゲ類」として扱われており,種ごとの消費量や輸入量の内訳は不明だが,国内生産量はほぼアラゲキクラゲのみで占められている.これまでアラゲキクラゲの供給は輸入に強く依存してきた.近年,外国産のリスクが顕在化し,信頼性の高い国内産アラゲキクラゲの消費が拡大したため,国内生産量は急増している.国内産アラゲキクラゲの生産・消費の拡大に伴い,栽培品種の育成や栽培技術の検討,病虫害対策,分類学的再検討,食品表示の適正化といった様々な問題を喚起することとなった.また,シイタケにおいて既に問題となっている安価な輸入菌床の大量流入や原産地偽装表示などはアラゲキクラゲにおいても起こりうる状況にある.本総説では日本におけるアラゲキクラゲ生産の現状と動向を俯瞰することで,取り組むべき課題と将来的脅威を解説し,国内生産基盤の強化と持続的発展を図ることを狙いとする.
  • 尾崎 佑磨, 霜村 典宏
    2022 年 29 巻 4 号 p. 141-148
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    通常の走査型電子顕微鏡(SEM)観察のための試料作製には試料を乾燥させる過程がある.生物試料のような含水試料を乾燥させる方法であるt-ブチルアルコール凍結乾燥法は高圧装置を必要とせず,処理も簡便であるという利点がある.しかし,ヒラタケ子実層托を電子顕微鏡観察のための一般的な固定法であるグルタルアルデヒドと四酸化オスミウムによる二重固定をし,t-ブチルアルコール凍結乾燥を経てSEMで観察すると,細胞は著しく収縮して変形を生じるという問題があった.そこで子実層托を四酸化オスミウム,タンニン酸,四酸化オスミウムによる三重固定をするとt-ブチルアルコール凍結乾燥を経ても細胞の変形が大きく抑制され,細胞表面の微形態を観察することが可能になった.本法で固定した子実層托を透過型電子顕微鏡でも観察し,細胞表面の形態保持性と細胞内構造との関連性について考察した.
  • 菅野 友美, 奥村 裕紀, 三宅 義明
    2022 年 29 巻 4 号 p. 149-153
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    マイタケ部位および培地の抗酸化活性と遷移金属含量(Fe3+,Cu2+,Mn2+)を測定すると共に,マイタケ菌さんをゲルろ過クロマトグラフィーで分画し,各画分の鉄含量と抗酸化活性との関連を検討した.その結果,マイタケの部位別抗酸化活性は菌さんが最も高い活性を示した.遷移金属含量のうち,Fe3+含量は基部が最も高い値を示した.マイタケタンパク質のゲルろ過クロマトグラフィーでは,フラクション14と24で抗酸化活性のピークがみられ,フラクション14ピークは粗タンパク質量のピークと重なることから抗酸化活性をもつタンパク質の存在が示唆された.また,フラクション30は最も鉄含量が高いことから,鉄結合タンパク質が関与している可能性が示された.
  • 熊倉 慧, 岡本 健吾, 小林 泰斗, 永井 俊匡, 松岡 寛樹
    2022 年 29 巻 4 号 p. 154-159
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    マンネンタケよりグルタミン酸プロテアーゼ遺伝子(GlGLP1)を同定した.GlGLP1は3つのエキソンから構成されていた.開始コドン及び終始コドンを含む807 bpからなり,シグナルペプチドを含む268アミノ酸をコードしていた.生育ステージ及び収穫後の遺伝子発現量を調べたところ,複数菌株で子実体原基において高い発現を確認した.これらのことからGlGLP1は,菌糸体から子実体原基形成への過程に関与していることが示唆された.さらに子実体における傘部及び柄部の部位別での発現を確認したところ,成熟に向かう傘部においても高い発現を確認した.このことからGlGLP1は,傘部の成熟や胞子形成にも関与していることが考えられた.
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