抄録
Laccaria bicolorは菌糸体内に細菌が共生することが報告されているが,他のL. bicolor菌株系統や他のLaccaria属菌における共生細菌の情報は得られていないのが現状である.本研究では,L. bicolorに加えてL. amethystinaとL. vinaceavellaneaにおける細菌検出を目的とした.Hyphae1(無処理),Hyphae2(寒天フィルターでexo細菌の除去)およびHyphae3(抗生物質処理)の3タイプの菌株系統を用いた.Hypha1の菌糸をSYTO染色したところ,緑色のスポットが多数検出できた.Hyphae2の菌糸でも緑色のスポットが認められたが,その数は少なかった.Hyphae3の菌糸では赤色スポットが認められたが緑色のスポットは認められなかった.Hyphae2の菌株系統からMBLb1a, MBLa2a, MBLa2b, MBLv13a,MBLv13bの5種類の細菌を分離した.これらを分子系統解析した結果,MBLb1a, MBLa2a,MBLa2bは,Paenibacillus chitinolyticusであり,MBLv13aはDietzia timorensis,MBLv13bはKytococcus sedentariusであることが判明した. リン酸アンモニウムあるいはリン酸カリを除いた検定培地においてL. vinaceoavellaneaをDietzia timorensisあるいはKytococcus sedentariusと共存培養したとき,顕著な宿主きのこ菌糸体の生育促進が認められた.