抄録
真菌の網羅的ポリアミン分析研究の一環として,子実体及び菌糸体より酸抽出されるポリアミン成分のHPLCとHPGCによる定量分析結果を試料湿重量あたりのモル数として算出し,425種のきのこ(主に子実体)のポリアミン構成をI-IVで報告した.最終稿Vでは,培養菌糸体を含む子嚢菌門きのこ5種と担子菌門きのこ23種を追加し,旧接合菌門(現ケカビ門他4門)のカビ9種の分析と旧ツボカビ門(現ツボカビ門他2門)のカビ3種を新規に分析し,既分析の関連種と比較した.子嚢菌門のチャワンタケ亜門に属する糸状菌ではプトレスシンとスペルミジンが検出され,きのこではこれらに加えて,ホモスペルミジンやスペルミンが微量検出された.担子菌門のハラタケ亜門に属するきのこではスペルミンとサーモスペルミンが検出される種とホモスペルミジンとカナバルミンが検出される種が分布していた.旧接合菌門と旧ツボカビ門に属する12種のカビ(菌糸体)は,プトレスシン,スペルミジン,スペルミンを含有していた.