抄録
量子力学的/分子力学的分子動力学 (QM/MM-MD) 法と自由エネルギー勾配 (FEG) 法とを併用して,水溶液中アンモニアイオン化過程の反応機構を調査した.溶質内及び溶質-溶媒間における相互作用を正確に記述するため,QM 溶質分子対に対して新たな半経験的分子軌道法(NDDO-MAIS-SSRP 法) を適用し,QM/MM 間非静電相互作用項において最適化 Lennard-Jones パラメータを反応座標に応じて内挿して用いた.結果として,溶質分子対の振動運動と移動プロトンの量子トンネル効果とを考慮すれば,活性化及び反応自由エネルギーはそれぞれ13.8 kcal/mol と 9.8 kcal/mol と見積もられ,実験値と良い対応を示すことが判った.