加速分子動力学法は統計力学的アプローチに基づいて,分子動力学法の時間加速を行う手法の総称である.この記事ではこの手法のうちの一つとして我々のグループにて開発しているAdaptive Boost 法(AB 法) [1] を紹介する.AB 法は今までの加速分子動力学法で提案されてきたアイデアの良いものを採用した,いわばこれまでの手法のいいとこどりをしたような手法であり,現象の時間加速から実際に現象が起きる時間を定量的に評価するに至るまで一連の解析を行うことが可能である.さらに実際にAB 法を用いたいくつかの応用例を紹介し,これからの発展・改良のために加速分子動力学法に存在する問題点についても述べる.