2019 年 21 巻 3 号 p. 213-219
分子動力学法(以下,MD 法) は,モンテカルロ法とともに,統計力学の数値解法である.モンテカルロ法は,統計力学の物理量の期待値の公式を,ボルツマン分布を実現する乱数を用いた数値積分により求める方法であり,分子動力学法に比べてより直接的に統計力学と結びついている.一方,分子動力学法は,エルゴード仮説により,分子動力学法で計算される物理量の時間平均値が統計力学で定義される物理量のアンサンブル平均と等しいという仮定の下に統計力学の数値解法となっている.今回は,マイクロカノニカルアンサンブルとカノニカルアンサンブルの分子動力学の基礎とその計算方法について説明する.