農研機構研究報告
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4章 原乳及び乳牛飼料に含まれる放射性物質の動態
東京電力福島第一原子力発電所放射能漏れ事故に起因する農研機構つくば農場産原乳および飼料に含まれる人工放射性核種汚染のモニタリング
小林 美穂 鈴木 一好小迫 孝実秋山 典昭三森 眞琴宮本 進西村 宏一小松 正憲甘利 雅拡相川 勝弘大谷 文博武田 久美子高橋 ひとみ木方 展治井倉 将人
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2021 年 2021 巻 8 号 p. 137-147

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抄録

2011 年3 月11 日の東日本大震災とそれに続く津波による冷却機能の喪失により,東京電力福島第一原子力発電所 (FDNPP)が損傷し,放射能漏れ事故が発生した.農研機構は震災翌日の3 月12 日に付属農場の原乳を採取し,放射能漏れ事故直前の原乳中γ線核種濃度を得た.牛乳放射能の緊急時調査は3 月15 日18 時に採取した原乳から開始した.原乳中の131I 濃度は155.2 Bq/L,3 月23 日には最高値の244.8 Bq/L に達した後,徐々に低下し,2011 年5 月26 日には下限検出値まで低下した.一方,放射性セシウムの汚染レベルは,131I よりも遅れて上昇した.すなわち,3 月15 日に1.87 Bq/L の134Cs および2.24 Bq/L の137Cs を検出したが,3 月20 日まで濃度は顕著に上昇しなかった.3 月21 日には134Cs と Cs の合計値として10 Bq/L を超えるレベルで検出され,その後,3 ヶ月間に渡って,134Cs+137Cs の濃度は10 Bq/L 以上 を維持した.一方,乳中の90Sr 濃度はFDNPP の事故後も増加せず,事故前から10 ~30 mBq/L を維持していた.2011 年から開始した混合飼料(TMR)中の放射性セシウム濃度調査では,134Cs および137Cs 濃度の最高値は,2012 年11 月の7.78 Bq/kg(乾物)および13.44 Bq/kg(乾物)で,2011 年よりも2012 年の測定値が高かった.放射性セシウム濃度(134Cs+137Cs) は,原乳では0.2 Bq/L,TMR では2 Bq/kg(乾物)程度まで低下した後,横ばいで推移している.

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