農研機構研究報告
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原著論文
近代米国品種由来の多収性を有する関東から九州地域向けのダイズ新品種「そらみずき」の育成
加藤 信 青木 恵美子南條 洋平猿田 正恭山崎 諒高橋 浩司山田 哲也髙橋 幹湯本 節三菱沼 亜衣羽鹿 牧太平田 香里山田 直弘
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2023 年 2023 巻 16 号 p. 43-64

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抄録

国内の育種選抜によりダイズの病虫害抵抗性や豆腐等の加工適性は改善されてきたが,収量は停滞傾向であり,多収品種の育成は喫緊の課題である. 「そらみずき」は優れた豆腐加工適性を有する「作系 76 号」(後の「フクユタカ A1 号」)を種子親,米国の多収品種「UA4805」を花粉親として交配後,系統選抜を繰り返し,2022 年に農研機構作物研究部門において育成された.茨城県つくばみらい市で実施した生産力検定試験の結果から「そらみずき」の成熟期は“やや晩”,種皮の地色は“黄白”,へその色は“淡褐”で,百粒重は 18~22 g 程度である.裂莢の難易は“難”,倒伏抵抗性および最下着莢節位の高さは機械化適性に優れる「サチユタカ A1 号」並みであり,コンバイン収穫により収量評価を行った現地実証試験での「そらみずき」の収量は慣行品種「里のほほえみ」や「フクユタカ」より 37%以上高かった.粗タンパク含有率は「サチユタカ A1 号」より 3%程度低いものの,豆腐加工適性は実需者から評価が高い「フクユタカ」並みに優れる. 奨励品種決定調査等の結果から「そらみずき」の栽培適地は関東から九州地域である.本品種はダイズモザイクウイルスおよびダイズシストセンチュウに対して感受性であることから,同病害の発生が確認されている圃場での作付けは避ける必要がある.

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