農研機構研究報告
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2023 巻, 16 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
表紙・目次・編集委員会・奥付
原著論文
  • 松﨑 守夫
    2023 年 2023 巻 16 号 p. 1-13
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    電子付録

    小麦「さとのそら」に対する窒素追肥の効果を,茨城県南部において 4 年度 (2016 年播種~2019 年播種) にわたって検討した.異なる前作物 (水稲,大豆など) を栽培した後,11 月下旬に小麦を播種した.追肥は硫安で施用し,1) 対照,2) 標準,3) 改善 1,4) 改善 2 の 4 処理を設けた.1) 対照では追肥を行なわず,2) 標準では 2 月末に窒素を 4 g/m2 施用した.3) 改善 1 は 1 月末と 2 月末に,4) 改善 2 は 2 月末と 3 月末に窒素を 4 g/m2 施用した.追肥によって子実収量,子実タンパク質含有率,子実窒素吸収量が増加した.しかし,同じ追肥処理でも,子実窒素吸収量は前作物によって変動した.大豆後小麦では,常に水稲後小麦より子実窒素吸収量が増加した.小麦は,肥料と土壌からほぼ半分ずつ窒素を吸収すると考えられるため,この子実窒素吸収量の変動は,土壌から吸収する窒素に影響されたと考えられた.今回,小麦が土壌から吸収した窒素は,主に土壌中の有機物 (有機態窒素) から無機化した窒素と考えられた.

  • 阿部 和幸, 副島 淳一, 別所 英男, 森谷 茂樹, 岩波 宏, 古藤田 信博, 増田 哲男, 小森 貞男, 岡田 和馬, 伊藤 祐司, ...
    2023 年 2023 巻 16 号 p. 15-28
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    ‘紅みのり’は 1981 年に‘つがる’に‘ガラ’を交雑して得た実生から選抜した,早生で果皮が濃赤色のリンゴ品種である.2009 年からリンゴ盛岡 67 号の系統名でリンゴ第 6 回系統適応性検定試験に供試し,2017 年 2 月の平成 28 年度果樹系統適応性検定試験成績検討会(寒冷地果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2019 年 4 月に登録番号第 27427 号として種苗法に基づき品種登録された.‘紅みのり’の樹勢は中程度, S 遺伝子型は S3S5 であり,‘ふじ’,‘つがる’等の主要経済品種とは交雑和合性を示す.斑点落葉病に対して抵抗性であり,黒星病には罹病性である.系統適応性検定試験の結果,短果枝の着生性は中ないし多で,満開日は ‘つがる’と同時期である.果実の収穫盛期は‘つがる’より 6 日程度早い早生品種である.果皮は濃赤色,果実重は 270 g で,‘つがる’より 24 g 程度小さい.果肉硬度は 16.4 ポンドであり,‘つがる’より有意に高い.糖度は 13.4%程度,酸度は‘つがる’より高い 0.33 g/100 ml 程度である.栽培地域,年次によって裂果の発生が認められる.気温が高いリンゴ産地においても‘つがる’と比較して安定して良好な着色が得られ,果肉が軟化しにくいため,‘つがる’において着色不良が発生しやすいリンゴ産地での普及が見込まれる.

  • 阿部 和幸, 森谷 茂樹, 岩波 宏, 古藤田 信博, 副島 淳一, 岡田 和馬, 高橋 佐栄, 加藤 秀憲, 小森 貞男, 土師 岳, 別 ...
    2023 年 2023 巻 16 号 p. 29-42
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    ‘錦秋’は 1994 年に‘千秋’に 4-4349(‘つがる’בいわかみ’)を交雑して得た実生から選抜した,着色と食味に優れる中生のリンゴ品種である.2009 年からリンゴ盛岡 70 号の系統名でリンゴ第 6 回系統適応性検定試験に供試し,2017 年 2 月の平成 28 年度果樹系統適応性検定試験成績検討会(寒冷地果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2019 年 4 月に登録番号第 27428 号として種苗法に基づき品種登録された.‘錦秋’の樹勢は中程度,S 遺伝子型は S3S7 であり,‘つがる’とは交雑不和合性であるが,その他の主要品種とは交雑和合性を示す.斑点落葉病に対して抵抗性であり,黒星病には罹病性である.系統適応性検定試験の結果,短果枝の着生性はやや少なく,満開日は‘つがる’や‘ふじ’より 2 日程度遅い.果実の収穫盛期は‘つがる’より 17 日程度遅い中生品種である.果皮は濃赤色であり,果実重は 298 g,果肉硬度は 13.8 ポンドで,果実重と果肉硬度は‘つがる’と同等である.糖度は 14.7%程度で,‘つがる’より 1%以上高い.酸度は 0.34 g/100 ml 程度で,‘つがる’より高く,‘ふじ’より低い.温暖なリンゴ栽培地域において着色良好な高品質果実の安定生産が可能な中生品種として普及が期待できる.

  • 加藤 信, 青木 恵美子, 南條 洋平, 猿田 正恭, 山崎 諒, 高橋 浩司, 山田 哲也, 髙橋 幹, 湯本 節三, 菱沼 亜衣, 羽鹿 ...
    2023 年 2023 巻 16 号 p. 43-64
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
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    国内の育種選抜によりダイズの病虫害抵抗性や豆腐等の加工適性は改善されてきたが,収量は停滞傾向であり,多収品種の育成は喫緊の課題である. 「そらみずき」は優れた豆腐加工適性を有する「作系 76 号」(後の「フクユタカ A1 号」)を種子親,米国の多収品種「UA4805」を花粉親として交配後,系統選抜を繰り返し,2022 年に農研機構作物研究部門において育成された.茨城県つくばみらい市で実施した生産力検定試験の結果から「そらみずき」の成熟期は“やや晩”,種皮の地色は“黄白”,へその色は“淡褐”で,百粒重は 18~22 g 程度である.裂莢の難易は“難”,倒伏抵抗性および最下着莢節位の高さは機械化適性に優れる「サチユタカ A1 号」並みであり,コンバイン収穫により収量評価を行った現地実証試験での「そらみずき」の収量は慣行品種「里のほほえみ」や「フクユタカ」より 37%以上高かった.粗タンパク含有率は「サチユタカ A1 号」より 3%程度低いものの,豆腐加工適性は実需者から評価が高い「フクユタカ」並みに優れる. 奨励品種決定調査等の結果から「そらみずき」の栽培適地は関東から九州地域である.本品種はダイズモザイクウイルスおよびダイズシストセンチュウに対して感受性であることから,同病害の発生が確認されている圃場での作付けは避ける必要がある.

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