農研機構研究報告
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原著論文
リンゴ新品種‘錦秋’
阿部 和幸森谷 茂樹岩波 宏古藤田 信博副島 淳一岡田 和馬高橋 佐栄加藤 秀憲小森 貞男土師 岳別所 英男伊藤 祐司石黒 亮清水 拓
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2023 年 2023 巻 16 号 p. 29-42

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抄録

‘錦秋’は 1994 年に‘千秋’に 4-4349(‘つがる’בいわかみ’)を交雑して得た実生から選抜した,着色と食味に優れる中生のリンゴ品種である.2009 年からリンゴ盛岡 70 号の系統名でリンゴ第 6 回系統適応性検定試験に供試し,2017 年 2 月の平成 28 年度果樹系統適応性検定試験成績検討会(寒冷地果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2019 年 4 月に登録番号第 27428 号として種苗法に基づき品種登録された.‘錦秋’の樹勢は中程度,S 遺伝子型は S3S7 であり,‘つがる’とは交雑不和合性であるが,その他の主要品種とは交雑和合性を示す.斑点落葉病に対して抵抗性であり,黒星病には罹病性である.系統適応性検定試験の結果,短果枝の着生性はやや少なく,満開日は‘つがる’や‘ふじ’より 2 日程度遅い.果実の収穫盛期は‘つがる’より 17 日程度遅い中生品種である.果皮は濃赤色であり,果実重は 298 g,果肉硬度は 13.8 ポンドで,果実重と果肉硬度は‘つがる’と同等である.糖度は 14.7%程度で,‘つがる’より 1%以上高い.酸度は 0.34 g/100 ml 程度で,‘つがる’より高く,‘ふじ’より低い.温暖なリンゴ栽培地域において着色良好な高品質果実の安定生産が可能な中生品種として普及が期待できる.

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