2024 年 2024 巻 18 号 p. 21-37
本研究は,大規模水稲作経営において,圃場別に収量コンバインで推定した収量と,網羅的に収集した栽培管理データをデータセットに統合して解析し,翌年の収量向上のための改善を進める「データ駆動型生産」の効果を定量的に検証することを目的とした.茨城県南部の経営体における約160 haの作付圃場すべてを対象として,研究プロジェクトに参画した2019年から2023年までの5年間,データを収集した.実施した主要な改善策とその効果は以下の通りである.有利販売の可能な低アミロース品種や糯品種の移植時期を繰り上げたことにより,出穂期が早まって登熟期間の良好な気象条件が確保されて,収量が安定した.「コシヒカリ」の作付を大区画圃場のあるブロックに集約したことで,作業能率が向上し,適期作業が可能になった.早生品種は周辺圃場より出穂が早いため,カメムシ防除を2020年から実施したことで,被害の集中を軽減した.さらに,水利の制約により移植時期が遅い圃場ブロックに耐倒伏性のある中晩生品種を配置したことで,ドローンを活用した2回追肥での多肥栽培が可能となり,収量が安定した.これらの改善により,茨城県南部の平年収量を10%以上上回る収量向上を実証した.