農研機構研究報告
Online ISSN : 2434-9909
Print ISSN : 2434-9895
ISSN-L : 2434-9895
ミニレビュー
農地の生物多様性と生態系サービスを保全するための管理手法
片山 直樹 馬場 友希池田 浩明
著者情報
研究報告書・技術報告書 フリー HTML

2025 年 2025 巻 20 号 p. 89-

詳細
抄録

農業と生物多様性の関係は,地域や気候,栽培管理の在り方に応じて複雑に変化するが,その実態は近年の研究によって初めて明らかになったものも少なくない.そこで本論文では,農地で生物多様性および生態系サービスを高めることのできる取組についてのミニレビューを行った.水田では生物多様性を保全できる取組についての研究事例が豊富であり,有機栽培,特別栽培,冬期湛水,ビオトープや江の設置などが生物の種数や個体数を高めることが明らかになった.これらの成果にもとづいて,農研機構は生物多様性を調査・評価するためのマニュアルを開発した.畑地や果樹園では日本の研究事例は少ないが,世界的には有機栽培などで生物の種数が増えることが示された.しかし,有機栽培をはじめとする生物多様性を保全できる取組の一部は,収量とのトレードオフが見られた.近年では生物の持つ生態系サービスを強化することで,収量を減らさないもしくは増やす取組についての研究も増えつつあり,農業の持続可能性を高めるための研究が今後さらに必要である.

著者関連情報
著者は自身の論文の著作権を保持し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構に対し農研機構研究報告からの論文の出版を許諾する。
前の記事 次の記事
feedback
Top