2026 年 47 巻 5 号 p. 276-283
本検討では,モビリティ分野で求められる軽量化を背景に,機械学習を活用して低比重かつ高弾性率の熱硬化性樹脂を開発した。従来,樹脂では比重を下げることと弾性率を高めることがトレードオフになりやすく,両立可能な分子設計が課題であった。そこで,機械学習により比重・弾性率および弾性率を比重で除した比弾性率を予測し,コンピュータ上で生成させた多数のバーチャル分子の物性予測結果から有望分子を提案させる分子設計フローを構築した。その結果,脂環構造やアニリン構造が高比弾性率化に有効であることが示唆され,その知見をもとに新規エポキシ樹脂硬化剤ADF を設計・合成した。ADF の硬化物は低比重かつ高弾性率を示し,従来系と比較して比弾性率は23%向上した。最終的にADF をさらに改良し,高比弾性率かつ良好なハンドリング性も備えた樹脂の開発に成功しており,モビリティ用複合材料マトリックス樹脂への応用が期待される。また,情報科学を駆使した本開発プロセスは,材料開発のさらなる効率化につながる可能性を示した。