抄録
メタクリル基含有トリフルオロプロピルシルセスキオキサンの合成と,これを用いたメタクリル酸メチルとのラジカル共重合により,新規な含フッ素系有機-無機ハイブリッド高分子の合成を行った。得られたハイブリッド高分子の静・動的接触角測定を行った結果,極めて少量のメタクリル基含有トリフルオロプロピルシルセスキオキサン導入量で表面自由エネルギーが著しく低下し,界面環境(水~空気界面)の変化の影響を受けにくい分子構造を形成していることが分かった。ハイブリッド高分子のX 線光電子分光法による表面組成解析を行った結果,表面自由エネルギーの著しい低下は気体-固体界面におけるF 原子の存在量よりもむしろ,その存在状態に強く依存していることが分かった。得られた含フッ素系有機-無機ハイブリッド高分子の高分子表面改質剤としての機能を明確化するため,紫外線硬化型ハードコート剤との複合化を行った。接触角,X 線光電子分光法,原子間力顕微鏡および電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて詳細な解析を行った結果,ハードコート膜の表面は含フッ素系有機-無機ハイブリッド高分子で占有された構造を形成し,その一次構造に基づく表面特性を発現していることが明らかとなった。