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オリゴロイシン型両親媒性分子が形成する薄膜の 熱処理あるいは加圧による応力向上
佐藤  圭亮小野 貴仁山田  哲弘
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2014 年 35 巻 1 号 p. 17-23

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抄録
構造要素としてトリロイシン基を含むジドデシルアンモニウム塩は,クロロホルム溶液にして剥離加工紙上で風乾すると柔軟なフィルムを形成した。一方,同じ方法で作製したテトラロイシン基を含むジドデシルアンモニウム塩のキャストフィルムは著しく脆かった。しかしながら,この脆いフィルムを70℃で1 ~3 時間熟成すると柔軟なフィルムに変化した。熱処理の他,キセロゲルを油圧プレスして作製したプレスフィルムにおいても機械強度の向上が観察された。例えば,テトラロイシン型両親媒性分子のキャストフィルムは,70℃で3 時間熟成することにより,引っ張り強度が6.1 MPa に,またプレスフィルムでは引っ張り強度が3.5 MPa に向上した。 トリロイシン型両親媒性分子もテトラロイシン型両親媒性分子も,ペプチド基は会合するとβ- シート構造を形成する。β- シートはロイシン側鎖が噛み合ってファスナーのように相互に固定化される。これをロイシンファスナーと呼ぶ。引っ張り強度の向上は,このロイシンファスナーの形成に起因していると考えられる。熱処理や油圧プレスは,ロイシン側鎖間の噛み合いを促進するため,フィルムの機械強度が向上したと考えられる。
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© 2014 合成樹脂工業協会
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