ネットワークポリマー
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カチオン付加反応によるフェノール樹脂の新規硬化システム (1)
森 邦夫井上 唯之三輪 広治
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1997 年 18 巻 4 号 p. 190-200

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抄録

フェノール樹脂の新規硬化法として, ノボラック樹脂を反応性希釈剤となり得る液状の多官能不飽和化合物であるジビニルベンゼンに溶解させ, 塩化アルミニウムのようなルイス酸やスルホン酸のようなプロトン酸のカチオン硬化触媒を添加することにより付加反応で架橋硬化させるシステムを開発した。同システムに最適なノボラック樹脂や配合比の決定, 硬化物の性能評価の他, 反応機構や硬化物の構造解析まで検討を行った。通常のノボラックはジビニルベンゼンに溶解しにくいが, 低分子量のオルソ配向性の高いノボラック及び, ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂が特異的にジビニルベンゼンに対して良好な相溶性を示ことを見いだし, 低粘度の一液のフェノール樹脂組成物を得た。得られた組成物にカチオン触媒を添加し, 常温~高温でジビニルベンゼンのビニル基のα位炭素がノボラック樹脂のフェノール核の活性点に付加する反応にてガス発生がなく良好な作業性で硬化させることが出来る。硬化物は性能バランスが非常に良好であり, 特に機械的強度, 耐熱性, 耐水性, 電気特性に優れ, フェノール系でありながら耐アルカリ性に優れる特性も有するため, 種々の用途に展開可能であると期待される。

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