2013 年 28 巻 4 号 p. 635-640
目的:高輝度膵(bright pancreas)は腹部超音波検査にてしばしば認められる所見であるが,その臨床的意義については明らかではない.近年,メタボリックシンドローム(以下,MetS)との関連に興味がもたれているが,高輝度膵と膵機能との関連を検討した報告は少ない.今回我々は,人間ドック受診者において,高輝度膵とMetS,血清アミラーゼ,血清エラスターゼIおよび膵内分泌機能との関連について検討した.
方法:2010年度に人間ドックを受診し,腹部超音波検査,MetS診断項目および膵内分泌機能と血清アミラーゼ,血清エラスターゼIを同時に検査した263名を対象とした(平均年齢57±12歳).高輝度膵は腹部超音波検査にて肝膵コントラスト陽性かつ膵辺縁の不明瞭化を伴うものと定義した.高輝度膵の有無と,MetS診断項目,インスリン抵抗性の指標であるhomeostasis model assessment (HOMA) of insulin resistance(HOMA-IR),血清アミラーゼ,血清エラスターゼIおよび膵内分泌機能の指標である血清インスリン,HOMA of β-cell function (HOMA-β)との関連を検討した.
結果:高輝度膵群ではMetS診断項目である腹囲,収縮期血圧,拡張期血圧,中性脂肪および空腹時血糖が有意に高値であり,high density lipoprotein(HDL)コレステロールが有意に低値であった(すべてp<0.001).血清アミラーゼ(p<0.001)および血清エラスターゼI(p<0.05)は,高輝度膵群では非高輝度膵群に比べ低値であった.血清インスリン(p<0.001)およびHOMA-β(p<0.05)は高輝度膵群において有意に上昇していた.
結論:高輝度膵はMetS診断項目,血清アミラーゼ,血清エラスターゼIの低下およびインスリン分泌能の上昇と関連していた.