抄録
目的:喫煙者は非喫煙者に比較しHDLコレステロール(HDL-C)が低値を示すことが報告されている.一方,飲酒はHDL-Cを増加させることが知られている.また,HDL-Cは体重が増加すると減少することもわかっている.しかし,喫煙者に比較して非喫煙者は体重が多いことも報告されており,喫煙と飲酒および体重増加とHDL-Cにおける相互の関係についてはよくわかっていない.本研究は,男性喫煙者における飲酒開始と禁煙が体重およびHDL-Cに与える影響 について検討を行った.
方法:対象は,2008年度と2009年度に2年間連続して医療法人社団進興会の健康診断を受診し,2008年度の問診で「非飲酒」と回答した男性10,765名とし,2009年度の問診回答により5群に群分けした.5群は,a群(非喫煙+非飲酒)4,387名,b群(喫煙+非飲酒)5,507名,c群(禁煙+非飲酒)278名,d群(喫煙+飲酒開始)539名,e群(禁煙+飲酒開始)54名とし,2008年度と2009年度の変化量の平均値を,一般線形モデルにおける繰り返し測定のある分散分析にて検定した.
結果:2008年度と2009年度における体重およびHDL-Cの変化は,いずれもc群で有意に増加した(体重:+1.25kg,HDL-C:+2.2mg/dL).他の群における体重の増加は小さかった.HDL-Cはc群以外減少した.
結論:喫煙者の体重増加は,飲酒行動を伴わない禁煙でのみ影響を受け,飲酒行動を伴う禁煙での影響は認められなかった.一方,飲酒はHDL-Cを増加させるといわれているが,喫煙者における飲酒開始の行動変容はHDL-Cに有意な変化は認められず,飲酒は必ずしもHDL-Cの増加につながるわけではないと示唆された.