2022 年 37 巻 1 号 p. 34-41
目的:2020年10月5日に乳房超音波診断ガイドライン改訂第4版が発行され,乳房超音波検診における要精検基準とカテゴリー判定基準(以下,新判定基準)の変更があった.新判定基準によって変更になった混合性パターンを呈する腫瘤に関して,当院の直近の症例における,改訂前の判定基準に基づく診断結果と,新判定基準に基づくカテゴリー判定の変化を調査し,判定基準の改訂が偽陽性率の低下に及ぼす効果について検討した.
方法:2018年4月1日~2020年3月31日に乳房超音波検査を受診した12,787件を対象に,混合性パターンを呈する腫瘤にあたる嚢胞内乳頭腫(疑いを含む)と判定したものを調査した.これらについて新判定基準に基づき再度結果を抽出し,改訂前後の結果を比較検討した.[使用機器 超音波検査装置:Canon Aplio300ほか]
結果:全件数12,787件のうち要精密検査数は547件.嚢胞内乳頭腫と判定したものは62件,うちカテゴリー3以上となったものは51件(0.399%,要精密検査数の9.324%).15mmを超えるもの3件,15mm以下48件,すべて自覚症状や随伴所見はなし.そのうち悪性が判明したものは15mm以下に非浸潤性乳管癌1件(0.008%,要精密検査数の0.183%)であった.
結論:今回の新判定基準の適用により要精密検査が絞り込まれ,偽陽性率が低下し特異度が向上する可能性が示された.