2019 年 68 巻 1 号 p. 37-39
人工関節置換術(THA)後に腸腰筋インピンジメントを生じ,前方より直視下腸腰筋切離を行った2例を報告する.【症例1】61歳女性.58歳時に右THAを施行し,術後1年で下肢伸展挙上(SLR)時の鼠径部痛が出現した.カップの前方突出を認め,腸腰筋エコーガイド下ブロックが著効し,腸腰筋インピンジメントと診断した.腸腰筋切離を行い,術後1週で疼痛は改善し,SLRが可能となった.【症例2】66歳女性.64歳時に右THAを施行し,術後1年でSLR時に大腿前面の痛みが出現した.明らかなカップの設置不良はなかったが,腸腰筋ブロックで疼痛改善を認め,術後2年3か月で腸腰筋インピンジメントと診断した.腸腰筋切離を行い,術後3週で疼痛は改善し,SLRが可能となった.【考察】腸腰筋インピンジメントに対してはカップの再置換術も選択肢となるが,カップの設置に大きな問題がない場合や,カップ再置換のリスクが高い場合には,腸腰筋切離の良い適応と考えられる.