抄録
顔面神経が頭蓋内の最も遠位部である内耳孔付近で前下小脳動脈により圧迫され,左顔面けいれんを来した稀な1例を報告する.症例は61歳女性.第1回目の手術では,顔面神経根出口帯に明らかな血管による圧迫所見はなく,近くを走行していた後下小脳動脈と出口帯との間にTenon feltを挿入したが,顔面けいれんは消失せず,2年後に第2回目の手術を行った.顔面神経根出口帯にやはり圧迫血管はなく,内耳孔付近で前下小脳動脈が顔面神経と蝸牛神経の間を貫通しているのが認められた.この前下小脳動脈を顔面神経より剥離したところ,術中の顔面の異常筋電図が消失したため,これを責任血管と考えて減圧した.術直後より左顔面けいれんは消失し,術後26ヵ月間再発していない.