Neurologia medico-chirurgica
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37 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 山下 勝弘, Elmar BUSCH, Christoph WIESSNER, Konstantin-Alexander HOSSMANN
    1997 年 37 巻 10 号 p. 723-729
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    2種類のラット中大脳動脈閉塞モデルにおいて、視床下部の病理学的変化と動物の体温変化を検討した。電気凝固による中大脳動脈閉塞では、閉塞後に体温の上昇はなく、24時間後の病理学的検討では視床下部に虚血性変化を認めなかった。一方、栓子による中大脳動脈閉塞では、閉塞後に39°Cを上回る顕著な体温上昇があり、24時間後の病理学的検討では、梗塞巣は電気擬固モデルの梗塞巣よりも大きく、視床下部が梗塞巣に含まれていた。栓子モデルにおける体温上昇の原因として視床下部の虚血性障害が考えられた。薬物効果判定などの目的で、栓子によるラット中大脳動脈閉塞モデルを用いて慢性実験を行う場合、動物の体温上昇に注意する必要がある。
  • 田中 俊英
    1997 年 37 巻 10 号 p. 730-738
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    Ad.CMV-LacZを9Lラットグリオーマ細胞と牛大動脈内皮細胞(BAEC)に導入し,beta-galactosidaseを定量しその発現効率を比較し又,Ad.CMV-tk導入後の9LとBAECの殺細胞効果を比較検討した.9L細胞に比べBAECのGCVに対する感受性は約10倍だった.またbystander effectに関してもAd.CMV-tk導入のBAECとwild typeの9Lの比を1:9にした条件で70%の殺細胞効果を認めた.ラットの脳内に移植した9L細胞にAd.CMV-tkを導入し,GCV投与後,48時間後に組織学的検索したところ腫瘍血管内皮細胞のアポトーシスが認められた.以上のことから血管内皮細胞,血管新生をターゲットした遺伝子治療の可能性が示唆された.
  • 若林 俊彦, Jun YOSHIDA, Junzo ISHIYAMA, Masaaki MIZUNO
    1997 年 37 巻 10 号 p. 739-746
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    Recombinant human tumor necrosis factor-α(rH-TNFα)及びそのリポソーム包埋処理による抗腫瘍効果をin vitro及びin vivoモデルを用いて検討した。rH-TNFαはin vitroにて直接的な抗腫瘍効果を呈すると共に、in vivoにてもgliosarcoma(T9)に対して間接的な抗腫瘍効果も観察し得た。さらにrH-TNFαのリポソーム包埋処理によりその抗腫瘍効果はin vitro⋅in vivoともに増幅した。In vivoにおける抗腫瘍効果の一因として腫瘍への栄養血管への障害誘導や細胞障害性マクロファージの活性化等が組織学的に観察された。以上の結果から、リポソーム包埋処理したrH-TNFαを全身或いは腫瘍局所投与することにより、悪性腫瘍の治療効果をさらに修飾できる可能性が示唆された。
  • 中村 俊孝, Kiyohiro HOUKIN, Hisatoshi SAITOH, Hiroshi ABE
    1997 年 37 巻 10 号 p. 747-751
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    副中大脳動脈に合併した未破裂前交通動脈瘤の一例を報告する。症例は63才女性で慢性的な後頭部痛があり、精査の結果、未破裂前交通動脈瘤が認められた。動脈瘤は、重複前交通動脈瘤部に認められたが、この部より右の副中大脳動脈が認められた。右のHeubner動脈はなかった。こうした血管奇形の診断においては、3次元CT血管造影法が有用であった。手術は通常の前側頭開頭で行われ、術後経過良好で退院した。副中大脳動脈に合併した通動脈瘤は22例の報告があった。多くは、前交通動脈あるいは前大脳動脈水平部に存在した。こうした副中大脳動脈は、Heubner動脈のvariationである可能性が高いと思われた。
  • 前原 健寿, Hiroyuki SHIMIZU, Masaya ODA, Nobutaka ARAI
    1997 年 37 巻 10 号 p. 752-756
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    外科治療にて発作が消失した、gangliogliomaと脳皮質形成異常の共存を認めた8才の難治てんかん症例を報告した。術前の画像診断では、左前頭葉に石灰化病巣が認められたのみで、gangliogliomaおよび脳皮質形成異常の診断は困難であった。セボフルラン麻酔下に術中皮質脳波記録を行い、てんかん性異常波を認めた石灰化部分と周囲の脳皮質を切除した。病理診断はそれぞれ、gangliogliomaおよび脳皮質形成異常であった。術後2年経過した現在、発作は一度も認められていない。gangliogliomaの手術に際しては、画像で認められない場合でも、周囲の脳皮質形成異常の存在の可能性を念頭において治療すべきと考えられた。
  • 赤井 卓也, Naoya KUWAYAMA, Tsuneaki OGIICHI, Masanori KURIMOTO, Shunro END ...
    1997 年 37 巻 10 号 p. 757-761
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    頭痛、嘔吐で発症した直静脈洞血栓症を伴ったメラノーマ髄腔播種の1例を報告する。症例は36歳女性。脳CT,MRでくも膜下腔のびまん性の造影剤による増強を認めた。入院後、急速に意識が低下し、血管写では直静脈洞の閉塞を認めた。マイクロカテーテルを用いて、ウロキナーゼによる選択的血栓溶解術を行い、静脈洞の再開通を得た。術後、意識障害は消失したが、2週間後に対麻痺が出現した。腰部脊髄の生検により、悪性メラノーマの髄腔播種と診断した。直静脈洞血栓症の原因としては、腫瘍細胞の浸潤による血管炎あるいは腫瘍の存在に伴う血液凝固機転の活性化が考えられた。
  • 上山 健彦, Norihiko TAMAKI, Takeshi KONDOH, Takashi KOKUNAI, Masahiro ASAD ...
    1997 年 37 巻 10 号 p. 762-765
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    上衣腫は稀に、くも膜下腔を広く進展する。小脳橋角部に主座を置き、上方は迂回槽を介し松果体部、下方は大孔部まで進展した上衣腫の1例を報告する。.症例は38才男性。小脳出血(腫瘍内出血)後に難聴を訴え、精査の結果、小脳橋角部及び松果体部腫瘍を認めた。MRIにてこれらの腫瘍の連続性、骨条件CTにて右内耳道拡大を認めた。第四脳室外側陥凹発生の小脳橋角部上衣腫が考えられたが、胸椎髄外上衣腫の既往があり、播種の可能性は否定できなかった。上衣腫はくも膜下腔に沿って至る所に進展し得る可能性があり、手術的治癒が困難な場合がある。その予後は手術摘出度に依存しており、段階的手術、複合到達法さらには新しい治療法が望まれる。
  • 井上 琢哉, Yoichi KANEKO, Hiromichi MANNOJI, Masashi FUKUI
    1997 年 37 巻 10 号 p. 766-770
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    左動眼神経麻痺で発症した下垂体巨細胞肉芽腫の一例について報告する。症例は62歳女性。頭蓋単純撮影では、軽度のトルコ鞍の拡大と鞍背のerosionを認めた。MRIにてトルコ鞍内に限局した脳と等信号の腫瘤を認め、Gd-DTPAで均一に増強された.腫瘤は経蝶骨洞的に全摘され、組織学的に巨細胞肉芽腫と診断された。術後10日間の経過で動眼神経麻痺は消失した。下垂体巨細胞肉芽腫は症候学的および放射線学的に下垂体腺腫と鑑別困難だが、腺腫に比べ視力視野障害を生じにくい傾向にある。トルコ鞍およびトルコ鞍上部の腫瘤で、視力視野障害のない動眼神経麻痺を認める場合、巨細胞肉芽腫を鑑別診断に加えるべきであると思われる。
  • 福多 真史, Shigeki KAMEYAMA, Yoshiho HONDA, Ryuichi TANAKA
    1997 年 37 巻 10 号 p. 771-774
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    顔面神経が頭蓋内の最も遠位部である内耳孔付近で前下小脳動脈により圧迫され,左顔面けいれんを来した稀な1例を報告する.症例は61歳女性.第1回目の手術では,顔面神経根出口帯に明らかな血管による圧迫所見はなく,近くを走行していた後下小脳動脈と出口帯との間にTenon feltを挿入したが,顔面けいれんは消失せず,2年後に第2回目の手術を行った.顔面神経根出口帯にやはり圧迫血管はなく,内耳孔付近で前下小脳動脈が顔面神経と蝸牛神経の間を貫通しているのが認められた.この前下小脳動脈を顔面神経より剥離したところ,術中の顔面の異常筋電図が消失したため,これを責任血管と考えて減圧した.術直後より左顔面けいれんは消失し,術後26ヵ月間再発していない.
  • 佐藤 慎哉, Kuniaki OGASAWARA, Hiroyuki KINOUCHI, Keiji KOHSYU, Takashi YOS ...
    1997 年 37 巻 10 号 p. 775-778
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/04/10
    ジャーナル フリー
    痙攣、発熱で発症しMRIでリング状増強効果を呈する61歳男性の症例を経験した。診断として転移性脳腫瘍、神経膠腫、脳膿瘍等が疑われた。この患者に対しTl-SPECTを行ったところ、早期像におけるTl uptake indexが2.21と高く、従来の報告で神経膠腫としても良い値であった。この時のwashout ratioは0.73であり、早期像の高吸収は局所的高血流に起因しているものと考えられた。この症例は手術に至る前に、発熱に対する抗生物質の投与で症状、画像所見とも改善し、脳膿瘍と診断された。以上の経過からは、Tl uptakeが低いと考えられていた脳膿瘍の様な良性疾患においてもuptakeが高い場合があり、同時にwashout ratioの評価も必要であることを示唆している。
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