抄録
後頭蓋窩の腫瘍摘出後に小脳性mutismをきたした稀な成人2症例を報告する。症例は、71歳男性の血管芽腫と74歳女性の転移性脳腫瘍例で、それぞれ小脳虫部上半部に存在した病変を、occipital transtentorial approachにて摘出した。術後2日目にmutismが出現し、3-4週間持続、その後小脳性構語障害が2-4か月間残存し軽快した。小脳性mutismは、dentatothalamocortical pathwayの障害で発生するが、小脳虫部の腫瘍が小児に好発することや、小児の後頭蓋窩腫瘍手術後の心因性変化が生じやすいことから、小脳性mutismの大部分は小児であり、成人例は稀である。