日本食品科学工学会誌
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軟らかく糸引きの良い高齢者向け納豆の開発
三星 沙織斎藤 春香松川 みゆき宮路 陽子田中 直義村橋 鮎美村松 芳多子渡辺 杉夫木内 幹
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2006 年 53 巻 9 号 p. 466-473

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抄録

高齢者の増加とともに高齢者用の食品の開発が切望されている.そこで,混合培養によって菌株の改良を行い,軟らかく糸引きのよい納豆の開発を行った.
1.高齢者用の軟らかい納豆を製造するために,中国の豆鼓から分離した菌で糸引納豆菌として使用できるが糸引きの弱いB. subtilisnatto) KFP 897と,M. luteus IAM 1056を混合培養して糸引きの強いB. subtilisnatto) KFP 89711を得た.
2.KFP 89711納豆の相対粘度はKFP 897納豆に比べて約5.2倍に増加し,市販納豆に近い値になった.同じくγ-GTP活性は約6倍であった.
3.キャピラリ-GCでの分析の結果,KFP 89711納豆の揮発性成分から糸引納豆の主要な臭い成分とされる10成分がすべて検出された.
4.東京都千代田区内の高齢者センター3箇所での試食調査の結果,見た目,臭い,糸引き,軟らかさ,味,嗜好の6項目を5段階で評価してもらったところ,施設利用者がもつ納豆のイメージよりもやや良いという結果を得た.従って,開発した糸引きの良い軟らかい納豆は高齢者用納豆として利用しうるものと考えられた.

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© 2006 日本食品科学工学会
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