日本食品科学工学会誌
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早期公開論文
早期公開論文の13件中1~13を表示しています
  • 西本 有紀, 折田 萌花, 土肥 賢志, 藤田 明子, 北村 豊
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-24-00032
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/07/16
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    過熱処理した3品種の玄米をペーストに加工し,その粉砕や貯蔵性に関する特性を実験的に解析した.まず,過熱処理区Bの処理方法,すなわち玄米殺菌・殺虫装置で作製した過熱玄米においてGABA含有量が増加すること,ならびに粉砕特性が優れることを確認した.次に,玄米ペーストについて,レトルト保管区と冷凍保管区においては,12ヵ月間の品質保持が可能であることを確認した.また,玄米ペーストに含まれるGABAは,対照区において湯煎によりその含有量が増加することがわかった.そして,玄米ペーストの粘弾性は保管条件によって異なるため,硬めのペーストが望ましい場合は冷凍保管,軟らかめのペーストが望ましい場合はレトルト保管など,用途によって保管温度を使い分けると良いと考えられた.なお,「ミズホチカラ」は徐々に硬くなる性質,「ヒメノモチ」は基本的には軟らかく徐々に粘りがなくなる性質がみられたため,品種特性を生かして用途を検討するとよいと考えられた.そして,「ひとめぼれ」の玄米ペーストの食味について,過熱処理区Bは冷凍保管・レトルト保管問わず12ヵ月後も基準と同等であり,過熱処理区Bにおける過熱処理が品質保持に役立っていることが示唆された.

  • 久能 昌朗, 神岡 太郎
    原稿種別: 解説
    論文ID: NSKKK-D-24-00039
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/24
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    A recent marketing trend is the emphasis on customer experiential value. Companies are now reorganizing their business activities from the viewpoint of what kind of experience customers can have in their relationship with the product and the company, beyond the functional value that the product itself directly provides to customers. It is believed that companies can achieve higher customer satisfaction if the research and development (R&D) department, which is upstream of product development, deepens its understanding of this customer experiential value and proactively participates in product development and marketing communication. This paper introduces marketing theories centered on customer experiential value with examples from the food industry, mainly targeting R&D personnel in food companies, and provides reference information for exploring new R&D approaches in the food industry in response to changes in the social and market environments.

  • 古澤 駿, 山梨 颯斗, 岡 大貴, 伊賀 大八, 井上 好文, 髙野 克己, 野口 智弘
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-24-00037
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究では真空冷却を行ったパンのクラム物性がソフト化する要因を解明するため, 真空冷却がパンに加わる余熱を抑制する効果に着目し, 余熱の抑制がデンプンとタンパク質に与える影響について検討を行った. デンプンは余熱の抑制により粒の形状と結晶性が保たれており, 真空冷却パンは糊化の進行が抑えられることが示された. またタンパク質は, 焼成によるタンパク質の不溶化が余熱によっても進行することが示され, 余熱の加わる量が少ない真空冷却パンでタンパク質の不溶化が抑制された. さらにタンパク質の性状に及ぼす影響を明らかにするために, 余熱により疎水性が低下したEtOH画分中のグリアジンの分子種量の測定を行った. 従来では熱により不溶化するとされる, グリアジンの中でも高い疎水性を持つα-/β-, γ-グリアジンが, 余熱の抑制される真空冷却パンでは高い溶解性を持つことが示された.

  • 横井 健二
    原稿種別: 地域食研究のエクセレンス
    論文ID: NSKKK-D-24-00010
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/07
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究では,乳酸菌を主に植物性資源から収集してライブラリーを形成し,それらを食品加工へ応用することを目的とした.乳酸菌収集時に16S rDNAの制限酵素切断多型による分類を行い,重複保存を避けた.多くの菌株は乳での生育が悪く,Lactococcus lactisのみ乳の発酵性が良好であり,L. lactis SIY8を選抜した.免疫調節活性を調べたところ,SIY8株はインターロイキン12の誘導能が高かった.SIY8株は,牛乳の発酵においてLactobacillus derublueckki ssp. bulgaricusと共発酵した場合,この菌の生育を促進した.得られた発酵乳は,通常のヨーグルトに比べ遊離アミノ酸含量が多く,味に影響を及ぼしていると考えられた .

  • 守田 和弘, 中川 裕子, 川崎 瑠花
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-24-00014
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/23
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    炊飯前の磨砕処理が炊飯後の米のテクスチャーに及ぼす影響を明らかにするとともに,米の新素材としての有用性を評価した.白米または玄米を十分な吸水が得られるまで浸漬し,磨砕後,炊飯を行うことで新たな米素材を得た.米素材調製時の加水量は,1倍加水ではかためのゲル状素材,2倍加水ではやわらかめのゲル状素材となった.米素材のテクスチャー特性は市販米ゲルに比べてやわらかかった.官能評価では,市販米ゲルに比べてなめらかで食べやすいと評価された.米素材の食品への応用として団子について検討したところ,米素材を使用した団子は米粉を使用した団子に比べて食感が良く,食べやすいと評価された.今後さまざまな加工品への応用が期待される.

  • 市川 雅弘, 三宅 将之, 平野 雄児, 有馬 忠明, 山田 雄司
    原稿種別: 技術論文
    論文ID: NSKKK-D-23-00060
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/21
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究では,パンの生地改良剤として利用されている乳化剤やパン生地中に含有する臭素がクロロプロパノール類および類縁体に与える影響を明らかにした.英国食品基準庁の報告(2004)12)による先行研究で「パン生地にDATEMなどの乳化剤を使用すると,パン中の3-MCPD濃度が高くなる」との報告があったため,日本国内で製パン用に一般流通している乳化剤として,蒸留MAGおよび,それを原料として製造したDATEMを用いて食パンを試作した.パン生地に対し,乳化剤を対粉2.4%という過剰な量で添加した食パンにおいて,3-MCPDは水溶性画分で検出限界(1 µg/kg)未満であり,脂溶性画分は乳化剤を添加していないコントロール品と比較して差異はなかった.したがって,製パン行程中に3-MCPDは生成されず,これらの乳化剤が3-MCPDの前駆体でないことを明らかにした.また,パン生地中に含有した臭素から,臭素付加体である3-MBPDが生成されないことを確認した.

  • 諸橋 敬子
    原稿種別: 地域食研究のエクセレンス
    論文ID: NSKKK-D-24-00016
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/17
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    Various types of rice flour are available in Japan, but the quality is inconsistent. Therefore, in order to produce high-quality rice flour consistently, it is necessary to establish guidelines for rice flour production. The author has identified the characteristics of rice flour that are conducive to making high-quality bread, sponge cake, and noodles. There guidelines indicate four indices: particles size under 75 μm, degree of damaged starch, amylose content, and water content. Among these, particles size under 75 μm, degree of damaged starch, and water content are recommended as common indicators across all applications when manufacturing products. The amylose content can vary based on the specific application of the rice flour. Aiming to produce rice flour that meets specific criteria, our institute analyzed rice flour samples from millers in Niigata Prefecture and provided feedback on the results. As a result, flour milling companies in Niigata Prefecture are able to supply rice flour with stable quality.

  • 大石 祐一, 菱田 結衣, 八巻 泰子, 山根 拓実, 岩槻 健, 吉仲 宏揮, 丸山 広恵, 河野 宏行
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-23-00105
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    皮膚は体内からの水分蒸散、外界からの異物侵入の防御を担っている。これら作用には皮膚構成分子が大きな役割を果たしており、これら分子は、加齢や栄養状態により制御されるホルモン、サイトカインの影響を大きく受ける。アディポネクチンは皮膚コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド量を増加させ、肝臓脂質量を減少させ、アカメガシワ葉エキスは3T3L1細胞のアディポネクチン量を増加させることが見出されている。そこで、アカメガシワ葉エキス末摂食の皮膚構成分子、脂質代謝への影響について、コラーゲン合成、ヒアルロン酸量、セラミド量を減少させる高脂肪食摂食下のラットを用いて検討した。アカメガシワ葉エキス末0.3%含有食の1か月間の摂食は、コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド量を増加させた。また、血清中コレステロール量には影響しなかったが、精巣周辺脂肪量を有意に減少させた。以上の結果、アカメガシワ葉エキス末摂食は皮膚機能改善効果があり、脂質量を減少させる可能性があると考えられた。

  • 永田 純一, 古場 一哲, 前田 剛希
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-24-00005
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    今回我々は,糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスに沖縄自然薯(トゲドコロ)と血糖値低下作用が知られているキクイモや沖縄で食用として用いられる里芋の一種であるタイモを含む食餌を5週間与えた時のトゲドコロの血糖および脂質代謝に及ぼす影響を比較検討した.またトゲドコロに含まれるジオスゲニンの影響を調べるため,ジオスゲニン量の異なる食餌を2週間与えた時の血糖および脂質代謝に及ぼす影響を調べた.その結果,キクイモの摂取は有意な血糖値の低下,盲腸重量の増加と肝臓脂質(TGおよびコレステロール)濃度の有意に低い値(p < 0.05)を示した.骨格筋においてグルコースの取り込みに関与する遺伝子(GLUT4)の発現量も他の群と比較して有意に高い発現量(p < 0.05)を示した.一方,トゲドコロの摂取は血中コレステロール濃度で有意に低い値(p < 0.05)を示した.血糖値や糖代謝に関連する遺伝子発現量にキクイモに見られる顕著な影響は認められなかった.キクイモには低分子水溶性食物繊維が最も多く含まれ,トゲドコロはキクイモの半分程度,タイモが最も少ない含量を示し,血糖値には水溶性食物繊維含量が反映したと考えられた.今回の実験では,トゲドコロ摂取は血糖値調節作用よりむしろジオスゲニンによる脂質代謝,特にコレステロール代謝に影響を及ぼす食餌因子としての可能性が示唆され,脂質濃度の調節作用に効果的な食材と考えられた.

  • 河野 凜々安, 西塔 正孝, 永井 毅
    原稿種別: 技術論文
    論文ID: NSKKK-D-24-00008
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/25
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    本研究では, 食品用酵素(Amylase AG 300LならびにGODO AGI-EG)を用いて発酵あんの品質改良を行った. その結果, 粒子径425 µm以上の米麹粉の使用, 発酵期間3-4日間が最適条件だった. 発酵3日目と比較して, 4日目のあんの赤色度と黄色度は高くあざやかな色彩を示し, 異性化糖による褐変があんの色彩に影響した. あんのBrix%は52.3-55.3と有意に高く, 酵素添加により甘味を強化したあんを調製可能であった. テクスチャー解析から, 酵素添加あんの破断強度や付着性は改良前のそれらと比較して有意に低く, 軟らかくべたつきが弱かった. 糖組成はいずれもd-グルコースを最も多く含み, GODO AGI-EG添加あんではd-フルクトースとスクロースを含有した. また, GABA含量はグルタミン酸脱炭酸酵素活性と高い正の相関が認められた. 酵素添加の有無による遊離アミノ酸組成に大きな違いはみられなかった. 官能試験の結果, 酵素の活用により発酵あんの色調改善, 麹臭の大幅な抑制, 甘味強化ならびに口溶けが改良され, 総合的な好ましさ評価の高いあんが調製できた.

  • 黒飛 知香, 干野 隆芳, 矢守 麻奈
    原稿種別: 技術論文
    論文ID: NSKKK-D-24-00001
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/22
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    本研究では,主原料の異なるトロミ調整食品(4種類)を異なる添加濃度(3区分)で調製した12種類のトロミ付与水溶液を用い,各試料のテクスチャーおよび嚥下特性を明らかにした.さらに,得られた官能評価値に対応する力学的特性について検討し,人がこれらの指標(力学的特性)に基づいてどのように知覚しているか推測した.(1)各試料の官能評価結果より,各試料のテクスチャー特性は大きく異なっていた.分散分析の結果,全テクスチャー項目(かたさ,飲み込みやすさ,べたつき(口腔内,喉の残留感))において全試料に有意な差が認められた.(2)SBE法で得られるσ0およびKの結果からは,トロミ調整食品ごとにトロミ調整食品の添加濃度の増加に伴う物性変化が大きく異なり,かたさと粘性のバランスが異なることが明らかとなった.一方,LST値およびSBE法から得られるn値では,トロミ調整食品の添加濃度の増加に伴って低下し,流れにくい特性に変化していた.(3)官能評価値と機器分析値の関連性からは,いずれの官能特性もSBE法から得られる見かけ粘度との相関が最も高かった.さらに,官能特性ごとに相関の高いずり速度が異なっており,イチゴジャムのテクスチャー特性20)と同様,トロミ付与水溶液においても舌の動き(ずり速度)を変化させて各テクスチャー特性を知覚していることが明らかとなった.かたさは,官能特性4項目の中で最も速いずり速度時の見かけ粘度と高い相関であった.そこで,このずり速度をShamaら16)の液状食品の粘度知覚領域に当てはめた結果,このずり速度に対応する「ずり応力」を指標としている可能性が示唆された.飲み込みやすさは,ずり速度11.6[s-1]時の見かけ粘度と高い相関が得られ,これらのずり速度は,飲み込みやすさの速さに関する先行研究18)19)の見解ともおおよそ一致した.べたつき(口腔内,喉の残留感)は,ずり速度5.1[s-1]時の見かけ粘度と相関が高く,これはイチゴジャム20)のべたつきと同程度の舌の動き(ずり速度)であった.以上より,べたつきはゾル,ゲルに関わらず同程度のずり速度時の見かけ粘度で知覚している可能性が示唆された.本研究より,トロミ付与水溶液のテクスチャー特性には力学的特性(見かけ粘度)が大きく影響していることが明らかとなった.また,SBE法がゲル状食品のジャム20)のみならず,ゾル状食品であるトロミ付与水溶液のテクスチャー特性の測定方法としても有用であることを示すことができた.

  • 和田 浩二
    原稿種別: 学会賞総説
    論文ID: NSKKK-D-24-00015
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/06
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    findings focused on non-centrifugal cane sugar, shiikuwasha (Citrus depressa), sponge gourd (Luffa cylindrica), and their processed products

  • 古川 那由太
    原稿種別: 報文
    論文ID: NSKKK-D-24-00007
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/03
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    Saccharomyces cerevisiaeは古くから人類の食生活を支えてきた重要な酵母だが, 市販されているS. cerevisiaeは多様性に乏しく, 種類によって食感や風味の違いが生じにくい. 一方, 自然界から単離した酵母は市販酵母とは異なる特性を有しているため, 酵母を使用した食品は既存の製品との差別化が容易になる. そこで本研究では, 鹿児島県のブランド酵母を開発するために, 鹿児島県立短期大学構内で酵母を単離してその産業的価値を明らかにすることを目的にした. 単離した3株の酵母をシークエンス解析した結果, 2株がS. cerevisiae (Sc-KPC1およびSc-KPC2), 1株がLachancea fermentati (Lf-KPC1)であることが明らかになった. 糖資化性試験を行なった結果, Sc-KPC1とSc-KPC2はマルトース存在下で有意な増殖を見せなかったが, Lf-KPC1は幅広い糖に資化性を示した. 糖含有量が異なる3種類のパン生地で発酵試験を実施した結果, Sc-KPC1とSc-KPC2はともに市販酵母と比べて同等以下の発酵速度を示したが, Lf-KPC1は同等以上の発酵速度を示した. 低糖生地を発酵後に1週間冷凍してから発酵試験を実施した結果, 全ての酵母は市販酵母と比べて発酵速度が速かった. Lf-KPC1を高糖液体培地で培養したところ, 市販酵母Cy1と比べて増殖速度が遅く, COやエタノールの産生量は低かった. Lf-KPC1の培養液中には高濃度の乳酸が存在したことから, Lf-KPC1はアルコール発酵と乳酸発酵を実行することが示された. Lf-KPC1とCy1を用いて製作したパンの官能評価試験を実施した結果, 「外観(色)」, 「香り」, 「味(甘さ)」, 「やわらかさ」, 「総合評価」では有意な差が見られなかったが, 「しっとりさ」についてはLf-KPC1の方が有意に高かった. 以上のことからLf-KPC1は優れた発酵特性を有しており, 市販酵母と同等以上の産業的価値があると言える.

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