本研究は, 日本本社企業8社と海外本社企業2社を対象に, 海外事業における品質保証体制の現状を調査し, 比較分析を行ったものである. 調査は半構造化インタビュー形式で実施し, リスクアセスメント, サプライヤー管理, トレーサビリティおよびクレーム対応, グローバル人材育成, 品質マネジメントの5項目について情報を収集した.結果として, 対象企業の品質保証体制を「統制型」「調整型」「自律型」の三類型に分類した. 「統制型」では本社主導でグループ共通の基準を運用し, 監査や情報共有が制度化されていた. 「調整型」は本社と現地法人が協働しつつ柔軟に役割を分担する体制であり, 「自律型」では現地法人が主体となり, 製品の流通形態に応じて本社が限定的に関与していた. いずれの企業もGFSIまたは同等の基準を導入しており, 国際的な枠組みが品質保証の基盤として機能していた. リスクアセスメントやサプライヤー管理では, 統制型の企業がリスクベースの評価や認証取得を徹底していたのに対し, 日本本社企業では製品特性や重要度に応じて, 本社と現地法人の役割を柔軟に分担する仕組みがみられた. トレーサビリティおよびクレーム対応では, 情報共有や指標管理の方法に差はあるものの, 重大案件に対する本社の関与が共通して確認された. グローバル人材育成では, 統制型の企業がグループ全体を対象とした体系的な教育体制を整えているのに対し, 日本本社企業では出向者研修や現地教育を中心とした独自の取り組みが進められていた. 本研究は, 海外本社企業を調査対象に含めることで, 日本本社企業の取り組みを相対化し, 国際的な品質保証体制の特徴を明らかにした点に意義がある. 今後は, 統一的基準と現地適応性の両立, ならびにリスクアセスメントとグローバル人材育成の強化が, 海外事業における品質保証体制の発展に不可欠であると考えられる.
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