日本食品科学工学会誌
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研究ノート
製糖工程から分離した乳酸菌を用いたサワーブレッドの風味と防カビ性能
仲田 弘明長谷川 秀樹櫻井 博章田村 雅彦
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2010 年 57 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

当社は北海道十勝管内に所在する芽室製糖所の製糖工程から,産業利用目的に有用な微生物の取得を行っている.製糖工程の温水浸出汁から取得された乳酸菌を使用し,独自の乳酸菌を用いてサワーブレッドの作製を試みた.
取得された乳酸菌菌株NT株は,16SリボソームDNA配列に基づく相同性検索の結果,ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)と同定された.本菌種は古来よりチーズやヨーグルトの製造等に用いられており,食経験のある菌種である.
NT株を乳酸菌培地で培養し,得られた乳酸菌菌体液を使用して市販スターター(TKスターター)と同じ工程によりサワー種を作製した.製パンは,ストレート法食パンにサワー種を添加しサワーブレッドを焼成し,官能試験,有機酸抽出,香気成分分析,防カビ性能の試験を行い市販スターターサワーブレッドおよびサワー種無添加ブレッド(一般的な食パンに該当)と比較した.
官能試験の結果,NT(NT株を使用したサワーブレッド)は強いチーズ臭のするサワーブレッドであった.NTについてGC-MSにより香気成分を分析したところ,チーズ臭はアセトイン,酪酸に由来するものと考えられた.
また,防カビ試験の結果より,NTは市販スターターよりも高い防カビ性能を保持していた.高い防カビ性能を有する理由として,NT株の生産する有機酸等の抗真菌活性物質が推測されたが,今回の試験では明らかとならなかった.

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© 2010 日本食品科学工学会
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