日本食品科学工学会誌
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黒酢もろみ末のII型糖尿病モデルマウスKK-Ayに対する高血糖抑制効果
長野 正信上野 知子藤井 暁侯 徳興藤井 信
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2010 年 57 巻 8 号 p. 346-354

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抄録

黒酢は鹿児島で伝統的に造られてきた食品であり,多くの生理作用を有していることが知られている.本研究では,黒酢の発酵残渣である黒酢もろみ末の高血糖抑制効果についてII型糖尿病モデルマウスKK-Ayを用いて検討を行った.マウスは1週間の馴化飼育後3群にわけ,コントロール食としてCE-2を用い,試験食として0.5%黒酢もろみ末含有CE-2, 0.01%ピオグリタゾン含有CE-2を作製し51日間摂取させた.ピオグリタゾン群の血糖値は飼育10日目よりコントロール群に対して有意に低下し,黒酢もろみ末群の血糖値は飼育40日目よりコントロール群に対して有意に低下した.血中総コレステロール濃度,中性脂肪濃度は黒酢もろみ末群,ピオグリタゾン群いずれでも有意に低下したものの,肝臓中の中性脂肪含量は黒酢もろみ末群のみ有意に低下した.さらに,筋肉,肝臓,脂肪組織中のタンパク質発現を検討したところ,筋肉中のGLUT4の膜移行が黒酢もろみ末群およびピオグリタゾン群で有意に増加した.また,PPARαおよびリン酸化AMPKαも黒酢もろみ末群およびピオグリタゾン群で有意に増加した.一方,肝臓中では,IRβの発現が黒酢もろみ末群で有意に増加しており,そのリン酸化は黒酢もろみ末群およびピオグリタゾン群で有意に増加した.脂肪組織中のPPARγについて検討したところ,ピオグリタゾン群では有意に発現が亢進したが,黒酢もろみ末群では有意に減少した.以上より,黒酢もろみ末は高血糖抑制および高脂血症抑制に有用な食品であることが示唆された.

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© 2010 日本食品科学工学会
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